もしも、あなたがお金を預けているニュージーランドの銀行が破綻した場合、あなたの預入金がどうなるのかご存知ですか?
ニュージーランドは日本同様、預金者のお金を全額補償する法的な制度は存在しません。
しかし、預金保護制度というものがあり、ニュージーランドで銀行登録されている下記の27銀行に預けられている預金については1銀行につき、1預金者、最大$10万ドルまで補償されます。
国が補償するのは1行につき1預金者最大10万ドル。
1つの銀行に20万ドル預けていた場合、補償されるのは10万ドルまで。
2つの銀行に10万ドルづつ預けていた場合、補償されるのは10万ドルづつ、計20万ドルまでです。
ニュージーランドの預金保護制度
2008年9月にアメリカの投資銀行大手リーマン・ブラザースが世界史上最大級となる負債額6000億米ドルを超える規模で破綻したことをきっかけに発生した世界規模の金融危機を教訓に、ニュージーランドでは、The Deposit Protection Scheme Regulations という預金保護スキームが国会で可決され、当時財務大臣を務めていたビル イングリッシュ氏が制定したのが始まりです。
ビル イングリッシュ氏が制定したThe Deposit Protection Scheme Regulations 2010 というセーフティネットは、2019年末をもって現在のDesposit Takers Act 2020に変わり、預金保護の枠組みが導入されていますが、預金者にとって大きな変更はなく、主な変更は預かる側の金融機関に対して受け入れる際の規制を盛り込んだものになっています。
破綻したリーマン・ブラザースが抱えていた6000億米ドルの負債は巨額すぎて想像力をぶち抜いています。6000億米ドルを破綻当時の為替レートで円に換算するとおよそ63兆円。これが、どれほどの額なのかイメージしてもらえそうな例を2つ挙げておきます。
あなたが1から63兆までを1秒間に1づつ数えるとします。
すると1年間でカウントできるのは31,536,000なので、間違えず、休むことなく24時間数え続けても2000年近くを要する天文学的な金額なのです。
もう一つ、ニュージーランドを絡めると、当時のニュージーランドは国際通貨基金(IMF)による世界経済規模ランキング(GDPベース)で185カ国中57位の国でした。
もうすぐ上位30%入りしそうな中堅どころの国。そんな世界経済上位入りが視野に入っているニュージーランドの国家予算は当時約3.9兆円でした。
つまり当時のニュージーランド国家予算16年分に匹敵する金額をリーマン・ブラザースという一企業が負債として抱えていて、その会社が倒産したということです。
さらに続けると、ニュージーランドは世界金融危機の後に立ち直り、経済成長を果たしましたが、それでも2021年度国家予算は約15兆円。2008年当時の約4倍にもなる予算ですが、63兆円には遠く及ばない。リーマン・ブラザースの破綻がいかに世界を危機に貶めたかをイメージしていただけたでしょうか。
2023年中に改定可決、2024年中に制定の可能性 - Desposit Takers Bill
現在、ニュージーランド国会にはDesposit Takers Billという法改定案が提出されています。
これは、ニュージーランドの中央銀行であるRBNZ – Reserve Bank of New Zealandに登録された金融機関を含むニュージーランドにある全ての銀行と、ノンバンクの預金取扱業者に対する単一の規制体制を構築し、同時に監督権限を従来の財務省からRBNZへ移行させ規制を強化するものです。
改正案では、万が一、銀行が破綻した場合にRBNZの管理下に納めることで、預金者が不安を感じないようにするための預金者補償スキーム(DCS: Depositor Compensation Scheme)として、預金者1人当たり、1金融機関あたり最高10万ドルの預金保険に加入する事がほぼ確定しています。
実のところ、中央銀行が安定感を持たせる預金保護制度を導入していない国は、OECD(経済協力開発機構)加盟国38カ国中2カ国。我々が住むニュージランドとイスラエルのみで、ニュージーランドは異例といえる存在です。
IFのケース。もしあなたの銀行が破綻したらどう処理が進むのか?
上述したDesposit Takers Billがそのままの形で可決された状態で、あなたの銀行が破綻すると、大凡で次のような流れになることが見込まれます。
- あなたは銀行からの連絡、またはメディアを通じて破綻を知ります。
- 「破綻」ですから銀行の扉は閉まり、ATMやネットバンキングも使えなくなり、預金の引き出しもできません。
- 破綻した銀行に代わりRBNZが管財人として破綻処理に当たる事が表明され、破綻パニックの増大を防ぐ呼びかけが行われる。
- RBNZは銀行破綻から24時間以内に、閉じられた銀行へのアクセスを一時的に再開し、優先債権者や債務者に対する債務を償還。(優先債権とは、みなさんの給与や税金等が該当)。
- 預金者へ上限10万ドルまでを補償する際の申請方法を通達。(待っていてもお金は戻ってきません。預金者は通達内容に沿って補償申請を自分で行う必要があり、破綻した銀行に預けていた預金額や口座の種類、名義人などの情報が求められる筈です)
- 補償申請後、審査を経て10万ドルを上限として預け入れていた額が支払われます。10万ドルを越えた額については補償対象ではないため、恐ろしいことに銀行の破綻と同時に消えてなくなります。
預金が10万ドルを超えたら検討したいこと
10万ドルを超えたら、そこから目的別にお金を3つに分け、10万ドルを超えないよう、いくつかの銀行に分散させることを検討するのが良いです。こうすることでリスク回避になり、10万ドル以上のお金を補償範囲内に納めることができます。
- 万が一のトラブルに備えて普段はタッチしない、いざという時の生活費
- 失業による収入減、手術等の医療費用、緊急帰国など
- 将来使うお金
- 不動産や車購入。起業資金、家や車の修繕など
- 上記に該当しない余剰金
- 給与の受取口座。普段の生活で使う資金
上記リスト3の余剰金については、自由に使ってよいお金という位置づけですが、全額使い切るのではなく、一部は活用して資産運用していくことをお勧めします。
”If you don’t find a way to make money while you sleep, you will work until you die”というのは、稀代の大投資家ウォーレン・バフェット氏の言葉です。
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