NZ4月雇用統計 結果 -まだまだ就職しやすい環境‐

仕事

先日、4月のThe Monthly Employment Indicator (MEI=月次雇用統計)が前月比+0.6%と発表されました。

ものかん
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MEI(月次雇用統計)というのは、経済活動の基盤となる国内の労働市場がどうなっているのかを示した重要なデータで毎月Stats NZ(ニュージーランド統計局)が発表しています。
雇用者数、失業者数、労働参加率、失業率の4つのデータで構成されているのですが、要するにMEIの数字が継続的に上がっていれば就職や転職しやすい時期と言え、下がり続ければ逆に就職や転職が難しい時期と解釈することができるので、個人なら、このデータを基に転職活動のタイミングを判断できるし、企業なら新規事業の立ち上げやM&A、製品やサービスの投入時期などを判断したりマーケティング戦略の見直しなどに活用します。

The Treasury (ニュージーランド財務省)は2024年後半に失業率が現在の3.4%から5.3%に悪化し、15万人程度が失業者になると予測していることを発表していますが、4月の雇用統計では就業者数が前年同月比3.8%増となり、今のところ失業者が増える兆しはなく、逆に昨年1月以来最も速いペースで就業者数が増加しているという数字になりました。

ものかん
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就業者数が前年同月比3.8%増となっているのは間違いなく移民の流入が寄与しているものです

じつはこの数ヶ月の間、怒涛の勢いで移民がニュージーランドに引っ越してきていて、そのペースは純移民者数にして年間10万人以上に相当する、超がつくほどのハイパーペース。

純移民者数とは、永住権を取得して入国した移民者から、ニュージーランドでの生活を切り上げて母国へ帰国、または他国へさらなる移住のために出国した移民者の数を引いた数。

ソース:StatsNZ

Stats NZが統計をとり始めてから過去最高の純移民者数を出した2020年でも9.1万人ですから、年間10万人以上に相当するペースというのがどれほど凄まじい勢いであるかが伺い知れます。

そして一般的には移民してきたら家と仕事を見つけるという流れになるので、ニュージーランド人や、既に地に足をつけて生活している移民の就職・転職戦線に加わり仕事探しを始めるのですが、幸運なことに今のニュージーランドは人手不足で仕事がある状況なので、どんどん入ってくる移民もどんどん仕事を見つけ、就業者数前年同月比3.8%増に大きく寄与している状況です。

2023年は純移民数が記録的に多いようなので日本人永住者も増えているのかなと思って調べてみましたが、日本人永住者の場合は、入国者数が爆発的に増える予測になっている一方、帰国者数に歯止めがかかっていないようで、2023年は純増に転じるものの、その数は全体を10万増とした場合0.2%に相当する213人の増加という予測になっていました。

日本人入国者数帰国者数純移民者数
2021年1821,113-931
2022年2571,238-981
2022年(予測)1,4571,244+213
ソース:StatsNZ

2021-22年はコロナ禍の影響が色濃くでていた特殊な時期で、日本人の純移民者数はマイナスになっていますが、国籍を問わず、どの国の移民もニュージーランドから出国しました。例えば2021年、日本を含むアジア圏からの入国者は6,711人でしたが、出国者は3倍の19,450人。欧州圏からの入国者は3,874人、出国者は2倍の7,778人となっており、2022年もほぼ同じ動きが見られました。

新たな雇用が労働力の増加よりも速く生み出されている

移民という新たな労働力が増えているにも関わらず、求職者数を上回る新たな仕事が生まれていて雇用統計も前月比+0.6%と好調です。

このため、The Treasury (ニュージーランド財務省)が予測している景気後退のサインとして注視すべきものは今のところ出ていないと言える状況ですが、全く無いわけでもなく、一つの兆候としてオンライン求人件数が大きく減少していることが挙げられます。

具体的には下記グラフが示すとおり、移民の増加が見え始めた2022年半ばに求人広告件数がピークを迎え、その後は急速に減少し始めています。
2023年3月期の求人件数でも前年同月比-16%と大きく減少して13.3万件と発表されています。

ソース: Ministry of Business, Innovation & Employment


前年同月比で‐16%の減少は大きいと言えますが、それでもコロナ禍以前の水準を大幅に上回っているし、雇用統計が強いとなれば、今回の求人件数減少だけに目を向けて景気後退局面に入ったと判断するのはムリがあります。

あくまでも、そんな兆候がでているという程度ですね。

将来の見通し

現時点でニュージーランドの国内需要はまだ強いと言えますが、将来的には、政策金利引き上げによるインフレ圧力の緩和が目に見えてくることが見込まれます。
そうなると企業の利益や個人の所得が減り、倒産企業が増え、失業率が上がり、経済が停滞するという財務省が予測している事態に陥る可能性があります。

The Treasury (ニュージーランド財務省)の予測を「杞憂だった」と受け流すためには、大量の移民が流れ込んでいる今、新たな移民による住宅確保でデフレを阻止することが重要な要素になります。

しかも、この場合、移民者がすぐに住宅を購入するのか、賃貸するのかは問題になりません。
賃貸であっても家がなければ借りることができず、借りられるという事は誰かが購入して所有しているわけなので、単純に移民人口が増える=住宅需要が高まるという構図があり、需要が高まれば、ここ2年ほど苦渋を味わった家主と不動産エージェントが少しでも高く売りさばこうと躍起になり住宅価格が再度上昇することでデフレの抑制に期待できます。

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