2023年6月末をもって政府によるガソリン補助金が打ち切られたことで、現在、ニュージーランドのガソリン価格はGST(消費税)込みでおよそ30セント/リッターの負担増となっています。
そればかりか、様々な要因が絡み合っているという前提がありつつも、サウジアラビアが原油の減産を示唆して原油価格が10ドルほど上昇したり、国内需要が一時的な高まりを見せているなどで国内のガソリン価格は7月からの2ヶ月間でリッターあたり約55セントもの跳ね上がりをみせて、Gaspyの統計によれば国内平均ガソリン価格は既にリッターあたり3ドルを超えています。
しかし、ニュージーランド政府はサイクロンで損壊した道路の修復や整備・拡張、新たな公共交通の導入など、国土交通に関連した14の優先プロジェクトを発表し、むこう3年間で投資する$20.8billion (=208億ドル = 約180億円・NZ$1=86円換算)を、同時にむこう3年間で緩やかに、じわじわと段階的にガソリン税を引き上げることで投資額の一部を賄う提案をしています。
政府によるガソリン税の段階的引き上げ提案は以下の通り。
- まずは2セント引き上げ、
- 半年後にさらに2セント引き上げ、
- その半年後に今度は4セント引き上げ、
- 1年後にまた4セント引き上げる。
つまり、3年かけて12セントのガソリン税引き上げを計画しています。
「ガソリン税12セント/リッターならまあ仕方ない」
と思う方もいるかも知れませんが、
12セントというのは引き上がる分です。
現在のガソリン税は77セント/リッターなので、これが3年後に89セント/リッターになるという話。
加えて、あなたがオークランドで給油をしているなら、ここにオークランド地方ガソリン税が別途約13セント/リッター上乗せされて1リットル給油するごとに1.02ドルのガソリン税が徴収される事になるかも知れない。という話です。
そして、このガソリン増税案は10月に選挙を控えて野党から強い批判の声があがっています。
生活費の上昇が家計を逼迫している今、増税して大金を投じる国土交通事業計画を批判するのは国民の票を得るためには当然の流れと言えます。
しかし、
増税は遅かれ早かれ実施されるはず。
なぜなら過去を振り返ればほぼ定期的にガソリン税は増税されて国土交通の財源とされていることに加え、政治家も直接的なもの言いはしないものの、与野党を問わず道路整備と公共交通の充実は、使いどころの賛否はあれど大枠では必要不可欠という認識であり、同時にさらなる財源の確保も必要不可欠だという認識だからです。
ガソリン税が増税されると、その税収入はなにに使われるのか?
3年かけての段階的な増税が行われると、3年間で14億ドルほどの増税収となり、これらは主に国土交通の改善に当てられることになります。
具体的には、ニュージーランド政府の公式サイトに、国土交通に関連した14の優先プロジェクト(予算$20.8billion)をリストにしたものが掲載されてあり、先ずはこれらのプロジェクトを加速させていくためのものと考えられます。
- Warkworth to Whangārei – State Highway 1; Te Hana to Brynderwyns, Warkworth to Wellsford and Whangārei to Brynderwyns
- Auckland Northwest Rapid Transit
- Auckland third and fourth rail line expansion
- Avondale to Onehunga rail link
- Level crossing upgrade and removal – Auckland and Wellington
- Cambridge to Piarere – State Highway 1
- Tauranga to Tauriko – State Highway 29
- Wellington CBD to Airport – second Mount Victoria Tunnel and upgrades to Basin Reserve/Arras Tunnel
- Wellington CBD to Island Bay – Mass Rapid Transit
- Napier to Hastings – four-laning State Highway 2
- Nelson (Rocks Road) shared path – State Highway 6
- Richmond – Hope Bypass – State Highway 6
- Christchurch Northern Link – State Highway 1
- Ashburton Bridge – State Highway 1
向こう3年間の計画予算 $20.8billionの使い方
下記画像は予算の使い方を記した表です。
左の画像は拡張費
既存道路の改良、拡張、高架橋やトンネルの建設など、道路の容量を増やすことや、効率性を向上させて渋滞緩和をはかったり、公共交通の路線新設や延長、車輌の更新や増備などを行うための費用。
右の画像は維持費
既存道路の舗装補修や、排水溝の清掃など、道路が本来の機能を果たせるようにするためのメンテナンス費用で、道がそこにある限り、未来永劫必要な出費であり、道路や公共交通網が発達すればするほど、維持費も増えていきます。
これをみると、現政権は2024-27年にかけて14の優先プロジェクトとして挙げているとおりState Highwayと公共交通の拡張に予算を極振りしていることが分かる一方、拡張が進むぶん維持費が大きく増加していく様子が見てとれます。
維持費 | 2024 | 2030 | 上昇率 |
Public Transport | 0.85 | 1.27 | 49% |
State Highway | 1.36 | 1.96 | 44% |
Local Road | 1.08 | 1.47 | 36% |
これを賄っていく方法は、増税、より多くの移民受け入れ、国有資産の売却、支出削減など様々ありますが、道路の拡張は人や物の移動を効率化させて成長促進に寄与するという一面も見逃してはいけません。
例えば、物流の効率化により、企業のコスト削減や生産性の向上されれば経済成長につながりますし、道路の拡張は地域の交流が促進され地域産業の活性化だけでなく、観光客のアクセスも向上することで、観光業の活性化も期待できます。
ガソリン税の増税 あなたは支持派? 不支持派?
今回のガソリン税の増税案は、国土交通に関連した14の優先プロジェクト草案 Government Policy Statement on land transport 2024(GPS2024)に盛り込まれています。
ニュージーランド政府はGPS2024に対する国民のフィードバックを9月15日まで受け付けており、そのフィードバックフォームのQuestion3で、今回のガソリン税の増税案についての意見を求めています。
ご意見をお持ちの方はMinistry of Transport (交通省)のここからフィードバックすることができます。
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