ニュージーランド国内株式 90%+上昇した株・82%+下落した株

お金

在ニュージーランドの方の中には、ニュージーランド証券取引所(以下、NZX)の株取引を行っている方も多いと思います。1年の締めくくりを間近に控え、NZ Heraldが今年のニュージーランド株式市場のパフォーマンスを総括していたので、当ブログでもとりあげてみたいと思います。

ニュージーランド国内の株式市場に興味はあるけど、どこで証券取引口座を開けばいいのかわからない。という方は下記サービスプロバイダーのサイトをご参照ください。

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NZXには下記5つの市場+フォンテラに属する農家株主専用のFonterra Shareholders Market (FSM)があります。

NZX Main Board株式取引:銘柄(=上場企業)数 184
NZX Debt Market (NZDX)債権取引:銘柄(=債権銘柄)数 155
SGX-NZX Dairy Derivatives乳製品先物取引
NZX Equity Derivatives (NZCX)株式先物取引
S&P/NZX Indicesニュージーランド株式市場を広範に網羅する指数
情報は2023年12月18日時点のもの

S&P NZX50 Index(以下、NZX50)_はニュージーランド証券取引所に上場している185銘柄のうち時価総額(浮動株調整後)上位50社の銘柄で構成されたインデックス。

銘柄数でいうと3.7社に1社がこのインデックスに入っている計算ですが、この50社でニュージーランド株式時価総額(浮動株調整後)の90%をカバーしているため、市場の浮き沈みを見るうえでのベンチマークとして認知されています。

2021年に2.5%下落し、翌2022年はさらに12%下落。50銘柄中13銘柄だけがプラスで終わった状態で迎えた2023年。NZX50は1年を通して、狭いレンジ幅で上下はしたものの、12月18日の時点で-0.15%と今年も低迷しているが、総選挙を経てラクソン首相が11月に首相に就任すると、期待値からNZX50も上昇傾向が見られているが下記のチャートから分かります。

ソース:NZX

NZ Heraldが今年、特に高い株価上昇を見せたと紹介したのは下記3銘柄でした。

  • Serko Limited (NZX: SKO)
  • Sky Network Television Limited (NZX: SKT)
  • Infratil Limited (NZX: IFT)

今年、株価が90%以上上昇したベストパフォーマーとして紹介されていたのがSerko Limited。
2023年5月の決算での好業績を受けて株価が跳ね上がり、11月15日には一時$4.550をつけています。12月18日現在$4.200になっていましたが、それでも上昇率は80%+です。

Serkoなんて聞いたことのない企業名だなぁ?という方もいると思いますが、Serkoは企業が従業員の出張および経費の管理をオンライン上で行うプラットフォームを提供しているテック企業です。創業は2007年で2014年NZXに上場。その後、2018年にはASX(豪州証券取引所)でも上場を果たしています。

NZ Heraldの紹介では、「コロナパンデミック後の観光業(ツーリズム)の回復に伴い同社も業績を回復させている」としています。

Serkoの次にNZ Heraldが挙げたのは、SkyTVを運営するSky Network Television。
我が家にはSkyTVがないので、その魅力はわかりませんが、記事で社名を見てすぐに思い浮かんだのはFIFA女子ワールドカップとラグビーワールドカップの恩恵か?でした。

NZと豪州で共同開催されたFIFA女子ワールドカップがニュージーランドにNZ$1億ドルの経済効果をもたらしたという記事を本稿執筆の数日前に目にしたばかりだったのでなおさらそう思ったのかも知れません。

しかし、同社が今年新しく市場に投入したSky BoxというSky TVを観るためのデバイスのクオリティが低すぎて、3月の時点で「リリースの準備ができていない」とメディアに評され、8月にはNZ Heraldのスポーツ記者Chris Rattue氏がSky Boxの事を「It’s an absolute dog in so many ways.(あらゆる意味でひどい)」と酷評しており、Sky Network Televisionは非常に不安定な1年をおくったようです。

株価の上がる要素が、なおさらのことFIFA女子ワールドカップとラグビーワールドカップの恩恵のように思えますが、NZ Heraldによると、「謎の株式大量購入がみられて」株価を押し上げたようです。

チャートを見ると、確かにラグビーワールドカップ期間中に爆上がりしていますね。12月18日現在株価は$2.790。上昇率は24%+になっています。

ニュージーランドのインフラ投資会社で2019年からOne NZ(当時はVodafone)の株50%を保有していたInfratil Limitedが、2023年7月に残り半分の株を所有していたカナダの投資会社Brookfield Asset Managementから$18億ドルで買いあげ、今年ニュージーランド国内で行われた最大の取引を成立させて株価も上がりました。

Infratil は他にもウェリントン空港(株保有率66%)や、放射線治療を提供しているRHCNZ Medical Imaging Group(株保有率50.1%)、再生可能エネルギー事業など複数のインフラ事業に投資しています。

市場が小さすぎて値動きが少ないと言われるニュージーランド株式市場ですが、それでも上述したように大幅に値上がりする株もあればその逆も然り。NZ Heraldがワーストパフォーマーとして紹介したのは下記3銘柄です。

  • Pacific Edge Limited (NZX: PEB)
  • Synlait Milk Limited (NZX: SML)
  • The a2 Milk Company Limited (NZX: ATM)

Pacific Edgeはダニーデンに本社がある膀胱がん診断ツールCxbladderを提供する会社ですが、そのCxbladderがアメリカで保険適用外になるとの発表を6月に受けて株価は10セントを下回る事態に。

チャートでも断崖絶壁と言えるような形が6月あたりに見えます。

2023年11月23日に同社は「メディケアの不確実性にもかかわらず収益は大幅に増加」と題するメディアリリースをだし、その中で、2023年9月末までの6か月間の業績ハイライトを以下のように述べると同時に、アメリカで保険が再度適用されるよう努め、それに最大4年かかるがその間会社を運営していくための資本は十分にあると考えている旨を語っています

2023年12月19日時点での同社株価は1株NZ7.9セント。

前年同期比
売上高1,310万ドル50%増
税引後純損失1,510万ドル47.6%増
資本準備金6,220万ドル20.1%減
通貨単位:US$

Synlait Milkは乳児用粉ミルクおよび栄養製品を製造販売している企業で、中国資本のBright Dairy(Bright Foodの子会社)が39%、a2 Milkが20%の株を保有しています。

NZ Heraldの記事をもとに調べてみると、同社は2024年3月末迄にNZ$1.3億ドルの債務返済、同24年12月にも1.8億ドルの返済期限を迎える5年債を抱えているにも関わらず、事業売却も進まず資本の一部または全額を銀行借入で借り換える計画だとのことがStuffの記事にありました。

他にも、ニュースのヘッドラインを斜め読みした限りでは「沈みかけの船」のような状態に見えます。

  • 断続的に見られる株価の下落を伝えるニュースヘッドライン
  • 大株主であり、Synlait最大の顧客でもあるa2Milkが独占的製造供給契約を解除通知
  • 同社の会長兼独立取締役Simon Robertson氏辞任

そして、Synlait Milkの株を20%もつ2番目の大株主であるa2Milkは中国の経済低迷の現れにより株価が低迷しているらしく、ダブルパンチ状態ですね。

2023年12月15日にNZ Heraldに掲載された記事で、Craigs Investment Partners investment のディレクターMark Lister氏は、2024年のニュージーランド市場は10-12%の上昇を予測という楽観的な見方を示し、その理由として「経済は減速するだろうが、移民増加、住宅価格の回復、高水準の景況感と、労働市場の緩和(人材確保の容易さ改善)などで景気後退は避けられる」であろうことを予測理由に挙げています。

つまり、2024年に政策金利の引き下げが始まると、定期預金の魅力が下がり投資家が市場に戻ってきた際、現在のNZX50の総配当利回り4.5%(同氏談)は魅力的に映り市場が活性化するかもね。というようなニュアンスかと思います。

また、Devon Funds Managementでリテール部門責任者を務めるGreg Smith氏も「利下げ」をキーに挙げており、利下げが始まり、世界経済のソフトランディングとニュージーランド最大の貿易国である中国の市場回復が見られるなら、NZX50は再び13,000を超えるかもしれない。(2023年12月19日現在は11,565)としています。

https://www.spglobal.com/spdji/en/indices/equity/sp-nzx-50-index/#overview

本記事は2023年12月15日にNZ Heraldに掲載された記事:The NZ sharemarket has gone nowhere this year, but what will next year bring? を基に執筆しています。

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