当ブログ「ニュージーランドのお金」では、日本語力または日本の技術・経験・知識が求められるニュージーランド国内の求人を独自手法でサーチし、その中から、一部の求人を厳選してみなさんにご紹介しています。
実際、どれくらい厳選しているのかを2023年10-12月の3ヶ月間を例にあげると、日本語力を求める求人は全部で62件確認しました。
「ニュージーランドのお金」でご紹介したのはそのうちの20件です。
本稿では、ふだん「ニュージーランドのお金」がどのように求人広告をチェックしているのか公開し、また当サイトでは紹介できないと判断したあやしげな求人広告や、応募を控えるべき求人広告についても実例を出してお伝えします。
紹介する求人広告の選び方
当サイト「ニュージーランドのお金」がサーチした日本語力を求めている求人は、1件ずつ、下記5つの項目に照らし合わせて確認を行ったうえで、皆さんに求人が出ている事をお知らせするか否かを独自に判断しています。
- 必要なスキルまたは要件の確認
日本語力または日本の技術・経験・知識を求めている求人か確認 - 求人広告の信頼性と出稿/求人主の確認
求人広告掲載サイトおよび出稿/求人主が実在し、信頼できるのか確認 - 法的・倫理的問題のチェック
求人内容が法的・倫理的に適切か可能な範囲で確認 - キャリアの成長性と収入・ウェルビーイングの検討
求人がキャリア、収入およびウェルビーイングの面を評価 - ニュージーランドならではの経験またはユニーク性の評価
ニュージーランドならではの経験を得られる求人かなど、ユニーク性を評価
また、当サイトでは、日本語力を求める求人の統計も公開していますが、統計対象には原則として求人主が明確に分かり事業の実態が確認できる企業・団体の求人広告のみを含めています。
*例外対象の一例:人材紹介会社が行う求人主非公開の求人
必要なスキルまたは要件の確認
求人内容を確認して、日本語力が「必須」なのか、採用に「有利」なスキルなのか、または日本語力ではなく、日本の「技術・経験・知識」を求める求人なのか確認します。
日本の技術・経験・知識を求める求人の傾向として多いのは、Hospitality & Tourism業界の「日本食シェフ」経験ですが、過去にあったユニークなものとしては、「タトゥーアーティスト(和彫師)」や「日本メーカー腕時計の鑑定」、「日本のヘッドスパ技術」、「JSOX法の知識」といったものもありました。
求人広告の信頼性と出稿/求人主の評価
求人広告の信頼性を確保するために、求人が掲載されているサイトそのものの信頼性を下記のように評価しています。
求人掲載サイトの評価
求人内容ではなく、求人広告が掲載されているサイトそのものが信頼できるサイトなのかどうかを?
- 政府系求人支援サイト
教育関連求人を支援するGazetteなどURLの最後がgovt.nzで終わる政府運営求人サイトは信頼性が高いと考えます。 - 有料で広告掲載できる求人情報サイト
有料の求人掲載サイトは一般に信頼度が高く、SeekとTrademeがこれに該当します。ただし、Trademeは出稿主の実態確認が難しい場合があるため、信頼度の担保ではSeekが上。 - 求人主のウェブサイト内キャリアページ
求人主が信頼のおける企業・団体かどうかが重要なためサイトでの評価はなし。 - 人材紹介会社サイト
人材紹介会社の信頼度による。
Adeco、HYAS、Madison、Robert Half、Robert Walters 等 グローバル展開している有名どころは信頼度も高い。 - 無料で広告掲載できる求人情報サイト
Indeedなどの無料求人掲載サイトは、無料で(=誰でも)広告出稿できるが故にサイトに信頼性の担保はないと評価。
出稿/求人主の評価
出稿・求人主の評価は以下のように行っています。
- 出稿主名の確認
- 企業・団体名の場合:実態の有無をニュージーランドで正式登録されているかで確認
- 屋号の場合:掲載されている屋号で展開している事業の確認
- 事業が確認できる場合:企業・団体名を調べて、ニュージーランドで正式に登録されているか確認
- 事業が確認できない場合:信頼に欠けると判断し、紹介候補から外し、統計にも反映させない。
ことば
屋号:企業名とは異なる店やサービスの名前。(例:ファミレスの「ガスト」、「バーミヤン」、「しゃぶ葉 」、「ジョナサン」は屋号で、運営している企業の名称は株式会社すかいらーくホールディングス。
出稿主:求人広告を求人情報サイトに掲載している企業・団体。
求人主:雇用者。採用を決めた人材と雇用契約を結んで仕事を与え、対価として労働力を供給される企業・団体。
一般に出稿主は、実際に求人を募集している求人主か、または求人主と契約を交わした人材紹介会社などのいわゆるエージェントになります。
法的・倫理的問題のチェック
求人広告に記載されている内容をもう一度目を通して、法的な問題がなさそうか? をゆるく確認します。
この項目については私自身、労働法に深い知識がある訳でもないので、厳密にチェックできる知識がないので、ゆるくしか確認できないという方が正しい表現です。雇用条件、給与、労働時間などの明確な情報が法に触れていなさそうか(例:時給が掲載されている場合は法定最低時給を下回っていないか等)性別、人種、宗教、障がいなどの基準に基づいて差別的な内容を含んでいなさそうか等をざっと確認している。その程度です。
キャリアの成長性とウェルビーイングの検討
当サイトでは、日本語力が求められている求人であれば何でも良いという訳ではなく、在ニュージーランド邦人がより充実したキャリアとバランスの取れたより豊かな生活を送るために重要な要素となる、個人のウェルビーイングに貢献するであろう求人をご紹介するように努めています。
以下は、ウェルビーイングの指標として考慮している項目です。これらの要素が求人企業や業界に属することで期待できるかどうかを、当サイトの知識と可能な限りの業界調査に基づいて判断しています。
- 心理面:心の安定、幸福感、自己肯定感の向上
- 身体面:食事や運動など健康面のサポート
- 社会貢献:コミュニティへの関わり、人間関係の質向上
- 精神面:自己実現、目標の達成、学びの機会
- 経済面:経済的安定、適切な収入
ニュージーランドならではの経験またはユニーク性の評価
またご紹介する求人の中には、「充実したキャリアとバランスの取れた生活を送る」という当サイトの基準からはやや外れる仕事もあります。
ニュージーランドらしい仕事 とは何か? は人それぞれ異なりますが、
例えば、MilfordやRouteburn のハイキングガイドや、Lake Tekapoでの天文ガイド など、
ニュージーランドらしい仕事に就いて、この国を経験されることで、豊かな時間を過ごせたと感じられたなら、ニュージーランドを心に深く刻み込むことができる。
そのようなユニークな求人も当サイトでご紹介することがあります。
例に挙げた2つの仕事がなぜ、「充実したキャリアとバランスの取れた生活を送る」という基準から外れるのかについての補足。
異論反論もあるとは思いますが、私は以下のように考えています。
- 特定のスキルや趣味を活かした仕事である一方、昇進・昇給の機会が限定的
- 季節労働的な環境や不規則な勤務時間を求められることは収入の安定性を欠く
- 業界内または他業種への転職機会を含め将来のキャリアの発展や多角的なスキルの獲得に貢献しにくい
「あやしげ」な求人・応募を控えるべき求人
一般的な求人広告と異なり、企業・団体情報および出稿主情報が不明瞭または情報が著しく少ない求人はリスクが高いと判断しています。
当サイトでは、ケースバイケースではあるものの、求人広告に下記のような特徴が見られる場合、信頼性を疑い、リスクが高いと判断して紹介対象とせず、また有効求人とみなさず、統計にも反映させていません。
- 企業・団体の説明が求人広告内にない
- 企業・団体の登記がデジタルで確認できない
- 企業・団体の事業がデジタルで確認できない
- 企業・団体の所在地がデジタルで確認できない
- 企業・団体および、または事業のウェブサイトが確認できない
- 企業・団体および、または事業のソーシャルメディアが確認できない
- 企業・団体および、または事業主に関するマイナスのニュースが報じられている
- 求人情報サイトのApplyをクリックすると、別の求人情報サイトに飛ぶように設定されている
実例 こんな広告はあやしい・応募を控えるべき
いくつか実例をあげて画像とともに説明していきます。
実例1: Asian Cuisine Cooks企業登記は確認できるが、就労先店舗の所在および勤務地が不明
2023年3月13日Trademeに投稿された、日本食またはタイ食のシェフ経験を持つ人材募集の広告。
広告に企業名の記載があり、LocationはWellingtonになっています。
しかし求人内容を見ていくと、そこには、「LocationはAucklandで定期的にWellingtonへの出張がある」と書かれている事が確認できます。致命的記載ミスと流すこともできますが、求人広告で勤務地がウェリントンなのか、オークランドなのか不明瞭なのは健全とは言い難い。
またオークランドからウェリントンへの定期出張が必要なら、多店舗経営である事が想像できますが、経営するレストラン名の記載が一切ありません。
調べていくと求人企業のオーナーは、ウェリントン、ネイピア、そしてクライストチャーチに展開している日本食レストランの経営者であることが分かりましたが、その日本食レストランはオークランドに店舗はないようです。
しかも、
求人タイトルはアジア料理シェフ。内容は日本食またはタイ食のシェフなので、他の屋号でもレストランを経営している可能性が高いですが、結局、日本食レストラン以外に同社が経営する店舗を見つけることはできませんでした。
その代わり、
この求人企業のオーナーの家族・親族は、複数のタイレストランを一族ぐるみで経営していた(または、いる)ようで、2019年に440万ドルの脱税を行っているとして11名が告発された過去のニュース記事に名前がでていました。*高裁で同氏への告発は取り下げられたので本人は無罪。ただし告発された11名の家族、親族のうち5名は脱税を認めている。
結果:企業登記は確認できるが、就労先店舗およびその勤務地が不明瞭であるため有効求人と認めず。
実例2: Accommodation Supervisor企業登記とオーナーは確認できるが、企業および勤務施設の所在が不明
2023年3月10日Trademeに投稿された、中国語・日本語またはスペイン語が話せると有利になる宿泊施設のスーパーバイザー人材募集広告。
広告に企業名の記載があり登記確認もできますが、この企業は2023年10月に登記された新しい会社で、不動産管理サービスを業務にしている以外、企業のウェブサイトもSNSも一切の情報が見つかりません。
求人内容にも一切の企業情報および勤務施設の情報がなく、そこには同社が求める最低要件や職務と責任のみが箇条書されています。
情報が乏しく、事業の存在も確認できないため紹介候補から外れるだけでなく、有効求人とみなすこともできないと思いつつ、広告の最下部に記されていた連絡先担当者名と携帯番号を元に調べてみると意外な事が分かりました。
ん? えっ! 警察官なの!?
は? タレントなのか??
驚きですが、連絡先担当者名と携帯番号で、警察官としての写真や記事がでてきました。名前と携帯番号が完全一致しているので同姓同名の人違いでもないと思います。長年勤めた警察を退職して事業を起こし、同時にタレント事務所にも登録したと言う感じ? よく分かりません。
結果:たとえ現役または元警察官が経営者であったとしても、企業が人材を募集している場合、企業情報や就労先施設、勤務地がすべて不明であれば、安心して求人を紹介候補とする事はできませんし、統計のための有効求人とも見なしません。
実例3: Copywriter Wanted求人企業の確認はできずも、経営者および事業の実在確認はできた
2023年3月14日Indeedに投稿された、日本食とフード業界に精通したコピーライターの募集広告。
これスカイタワーやカジノ、ホテル、レストランなどを経営しているあの会社にしては企業説明がないし、何よりも求人要件少なっ!(画像内容が全て)というのが第一印象。
私が思い浮かべたのは、SKYCITY ENTERTAINMENT GROUP。こちらはSKY GROUPでした。
また会社登記を調べるとハミルトンでSky Group Limitedという会社が登記されていますが2019年を最後に決算が行われておらず、企業登録抹消対象になっていました。
その会社がクライストチャーチで求人募集しているわけですから、あやしいです。
Apply Nowをクリックしてみると、別の求人サイトに飛ばされました。あやしすぎる。
求人をさらに別の求人サイトに飛ばせるのは本当にあやしい事が多いですが、この求人主はロゴのようなデザインをアップしていたので、もう少し調べてみました。
すると、
LinkedInに同じロゴでSky Hospitality Groupというのがでてきた。
「ウェブサイトにアクセス」があったのでクリックすると、
おおっ
グループのホームページに飛びました。
HikariというSushiショップやThe Sushi Platterなど複数の屋号で2007年から展開しているよう。
それぞれのブランドのサイトをはじめFacebookなどのSNSアカウントもありますし、Uber EatsやDoorDash等でのデリバリーにも対応していました。
かなり、あやしみましたが、事業は実在していてきちんと展開もされているようです。
で、結局、店舗を運営している企業名はなに?
と思い返して、グループのホームページに記載されている情報を基にさらに掘り下げてみました。
結論からいうと、このグループの創設者は10を超える会社を所有しており各店舗単位で会社を立ち上げ独立採算制を敷いているようです。これ事態は何らおかしなことでも珍しい事でもありません。
ニュージーランドの老舗日本食レストラン大黒もこのようなスタイルですね。
ただ、求人サイトで名乗っていたSky Groupも、LinkedInや自社ホームページで名乗っているSky Hospitality Groupも、企業名としての登記はなく、(Sky Group Limitedは全く別の登録抹消間近の企業)今回の求人に関しては、結局どの会社が求人を出しているのかも不明なまま。
複数店舗で複数のポジションで働ける人材を広く募集しているような時なら勤務先が決まった時点でその会社と契約になるでしょうが、今回のようなマーケティング要員であれば、どの会社がヘッドカウントを持つのか決まっていて然るべき。
結論:一人のオーナーが複数の会社を経営し、複数の屋号で事業を展開していている事がわかったが、実際に雇用契約を交わす企業名を正しく開示していない点において不誠実さを感じる。また、どのような理由で求人サイトから別のサイトへ飛ばしているのか疑問。求人広告自体は有効と判断するが、当サイトでの紹介は難しい。
実例4: This is a minimum wage job – Drug test and police check ~企業登記は確認できるものの、求人内容は極めてあやしく近寄るべきでない。
Indeedには定型文を使った日本語力必須の求人が投稿されており、2024年3月は1~21日の間にLevinというウェリントンとパーマストンノースの間にある小さな町から6件の求人投稿を確認しています。(地域は異なるものの2024年3月だけでなく、毎月のように定型文を使った出稿を確認しています)
この6件は、全て異なる求人主名が記されておりポジションも下記のように様々ですが、必ず最低時給であることと、日本語力必須であること。採用時に薬物テストと犯罪履歴確認の3点を求めていることが明記されています。
Electrical Trades Assistant | This is a minimum wage job. You will need to be able to work on weekends and public holidays. Japanese language ability is a must to work with the team. Drug test and police check will be required for successful candidates. |
Hair Salon Assistant | This is a minimum wage job. You need to be available to work on weekends and public holidays. Japanese language is a must to work with the team and our customers. Drug test and police check will be required for successful candidates. |
Japanese Sushi Chef | This is a minimum wage job. You will need to be available to work on weekends and public holidays. Japanese language ability is must to work with the team. Drug test and police check will be required for successful candidates. |
Motor Mechanics Assistant | This is a minimum wage job. You will need to be available to work on weekends and public holidays. Japanese language ability is must to work with the team. Drug test and police check will be required for successful candidates. |
Sushi Chef | This is a minimum wage job. You will need to be available to work on weekends and public holidays. Japanese language is a must to work with the team. Drug test and police check will be required for successful candidates. |
Warehouse Administrator | This is a minimum wage job. You will need to be available to work on weekends and public holidays. Japanese language is a must to communicate with the team. Drug test and police check will be required for successful candidates. |
この求人広告群に見られる特徴は下記の通り。
- 求人地が地方都市であるにも関わらず、日本語力が必須
- その日本語力は社内コミュニケーションで必須と書かれていることが多い
- 企業は実際にニュージーランドで登記されていることが多い
- 企業のオーナーは2024年3月21日時点で100%中華系(企業のオーナー名から推測可)
- それら企業は、募集地域で登記されていない
- 仕事内容は極めて基本的で「これならできそう」と思える内容が多い
- IndeedのApplyをクリックするとJobspaceという別の求人情報サイトに飛ぶ
- Jobspaceには意味なさそうな数字列(下記画像オレンジ字参照)が記されている
これらの状況をみれば極めて「あやしい」。
確証がないのでクロと言い切ることは避けますが、「危うきに近寄るべからず」です。
しかも、2月に1件だけ、あやしいではなく、クロ判定と言える求人がありました。
求人主として記載されている企業を調べていたら、企業名と登記住所から、偶然にも私が個人的に何度か行ったことのあるオークランドのファリミー経営中華レストランだったというもの。
その店には日本人従業員は一人もいないし、日本語が必須なチームなんて存在し得ない。家族経営ですし、会話も中国語でされている。
この時の求人募集はタラナキ地域での寿司シェフだったので、その事も聞いてみましたが、経営は1店舗のみだし、全く知らないとのことでした。
店主が嘘をついていると疑うことも可能ですが、自分の登録企業名をわざわざ出して悪事を働くでしょうか。
ニュージーランドの地方都市で日本語が必須なチームが複数の業界、複数の企業から突如出現し、それらが同じようなタイミング、同じような定型文で求人を出すという時点で、企業は勝手に名前を使われていると理解したほうが腑に落ちるように思います。
私には誰がなんのためにやっているのか分かりませんが、間違いないのは、応募する=あなたの個人情報を渡すと言うことです。このような求人に対して面白半分でも応募するなどはしない事を強くおすすめします。
結論:企業登記は確認できるものの、求人内容は極めてあやしく近寄るべきでない。
まとめ
当ブログ「ニュージーランドのお金」では、ご紹介する日本語力を活かす求人の安全性を可能な限り担保するために、情報源の信頼性、企業・団体の信頼性、内容の信頼性を確認し、みなさんがニュージーランドでより充実した生活を送り、ウェルビーイング向上のサポートにつながるよう努めています。
当ブログでご紹介しない求人だからといって、それら全てが安全性が担保できなかったということでも、また充実した生活を送り、ウェルビーイング向上につながらないという訳でもありません。
ここまで述べてきたように、安全性の担保やキャリアの構築、ウェルビーイングの向上、または仕事のユニーク性などを総合的に判断していますので、当ブログで紹介していない気になる求人を見つけた際も本稿の確認ポイントを参考にしながら応募を検討することをお勧めします。
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