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「辞め時」の常識 NZで生き残るマネー戦略 | 労働者865人を対象にした調査から紐解くキャリア意識や転職に対する考え方

ニュージーランドで生き残るマネー戦略ー「辞め時」の常識
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ニュージーランドの労働市場では、多くの労働者が給与やキャリアの停滞に不満を感じ、転職を検討しています。
この傾向を裏付ける調査結果が、2025年5月に、日本にも支社がある大手人材紹介会社Robert Waltersのニュージーランド支社によって発表されました。

目次

調査内容の概要

  • 調査主体Robert Walters New Zealand
  • 調査対象:ニュージーランド在住の労働者 865人
  • 調査期間:2025年春

この調査は、ニュージーランド国内の働き手たちのキャリア意識や転職に対する考え方を把握するためにRobert Walters New Zealand が2025年春に実施したもので、ニュージーランド在住の労働者865人対象としたもの。

回答者の詳細な属性(業種・年齢層など)は公開されていませんが、実施主体が人材紹介会社であることを考慮すると、比較的ホワイトカラー職種に従事し、キャリアアップや転職に前向きな層が多く含まれていたと推測できます。

ものかん

率直に言えば、865人というサンプル数は決して大きいとは言えず、また人材紹介会社が接点を持つのは「過去に同社の転職支援サービスを利用したことがある人」や「転職市場に関心を持っている人」である可能性が高いため、この調査結果をもってニュージーランド全体の労働者の傾向を代弁するものだと断定するには無理があると考えます。とはいえ、ニュージーランドに住む日本人やこれからニュージーランドで仕事を探そうと考えている方々に、実際に現場で働く人々のリアルな不満や離職の兆しを垣間見るには、十分に示唆に富んだ調査だと思いご紹介することにしました。

5人に2人が転職を検討中という現実

Robert Waltersの調査によれば、約39%の回答者が「今後6か月以内に転職を検討している」と回答しています。これはおよそ5人に2人という非常に高い割合です。さらにそのうち19%(ほぼ5人に1人)は、すでに「積極的に新しい仕事を探している」段階にあります。

この数字は、単に「いい求人があれば転職したい」という軽い関心を超えて、すでに行動に移している人が一定数存在していることを意味しますが、ここで重要なのは、ニュージーランドではそもそも「常に転職市場を見ている」人が一定数いるという背景です。日本のように「一社に長く勤めるのが理想」という価値観は薄く、良い機会があればキャリアを動かすのはごく自然なこととされています。

その上で今回の39%という数字は、通常時よりもやや高めの印象です。
特に現在は、経済全体が冷え込みからの脱却を試みている最中で、企業の採用意欲も鈍化している不況下にあります。転職市場のハードルが上がっている中でも、これだけの人が「動きたい」と考えているのは、それだけ今の職場への不満や不安が強い証拠とも言えるでしょう。

加えて、経済環境が不安定な今だからこそ、「解雇されるリスク」に備えて仕事を探しておく」という消極的・防衛的な意味での転職意識も、数字を押し上げている可能性があります。

転職を考える主な理由とは?

転職を検討している理由は多岐にわたりますが、特に多く挙げられたのは次の7つです(複数回答):

順位理由回答率
1位昇給がない37%
2位キャリアの停滞33%
3位十分な評価がされない30%
4位仕事へのモチベーションが低下25%
5位ワークライフバランスが悪い22%
6位上司やチームに不満がある21%
7位会社の将来性に不安を感じる18%

昇給がない(37%)
物価の上昇が続くニュージーランドにおいて、給与の伸び悩みは生活そのものに直結する深刻な問題です。年々上がる住宅コストや食料品価格に対し、給料が据え置かれたままでは、実質賃金はむしろ低下しているのと同じ。家計を守るためには、「今の職場に留まり続けること」自体がリスクと捉えられてきているようです。
参照:NZで生き残るマネー戦略 ー「昇給なし」の常識

キャリアの停滞(33%)
「もう何年も昇進の話がない」「仕事がルーチン化してスキルが伸びていない」といった声が背景にあります。特に30代以降の層では、「このまま今の会社にいても未来が見えない」と感じる人が多く、将来への投資として転職を考える傾向が顕著。

十分な評価されない(30%)
努力や成果が正当に認識されないと感じている人も少なくありません。透明性の乏しい評価制度やマネジメントとの信頼関係の欠如が、心理的な“離職モード”を加速させているか。

仕事へのモチベーションが低下(25%)
日々の業務が単調に感じられたり、自分の仕事が組織にどれほど貢献しているのか見えなくなると、働く意欲は次第に失われていきます。やりがいを求めて転職する人が増えており、新しい環境で再び燃えたいという声が多いようです。

ワークライフバランスが悪い(22%)
長時間労働や休日出勤が続き、プライベートの時間が犠牲になることへの不満が高まっています。家族との時間や趣味、休息を大切にしたいという思いから、より柔軟な勤務形態や労働環境を求めて職場を変える人が増えています。

上司やチームに不満がある(21%)
職場の人間関係は働くうえで非常に重要です。コミュニケーション不足や上司のマネジメントスタイルに不満を持つ人は、ストレスを感じて転職を考えます。特にリーダーシップの欠如は、社員の離職を招きやすい要因となっています。

会社の将来性に不安を感じる(18%)
経済環境の変化や業績の悪化、経営方針の不透明さは社員の不安材料です。会社の安定性や成長性に疑問を抱き、将来を見据えてより良い環境を求める傾向が見られます。

「辞め時」の見極め方

「石の上にも三年」──日本ですら「かつての常識」と言われるかもしれないような発想ですが、ニュージーランドにおいてはこの発想そのものが、ほぼ存在しないと言っても過言ではありません
むしろ、「自分のキャリアを自分で選ぶ」「評価されない場所にとどまる必要はない」といった考え方が主流です。

ニュージーランドでは、スキルの向上・報酬の納得感・働きやすさを軸に職場を見直すことが、ごく自然な行動とされています。

もちろん、転職にはリスクもあります。

しかし「現職にとどまり続けること」もまた、給与が増えず、キャリアが伸びず、評価もされないというリスクをはらんでおり、全体の98%が中小企業であることを鑑みれば、ごく一部の企業にしか、従業員の昇給を含めキャリアパスを用意できる基礎がないと捉えることも可能です。

大切なのは、「現状に満足していないけれど、なんとなく働き続けている」という“思考停止状態”から抜け出し、情報を集めて、自分の市場価値を知り、交渉する力をつけることです。

「辞め時」を見極める3つのサイン

1: 昇給が見込めない
長期間給与が据え置かれているなら、自分の市場価値を見直すタイミング
2: キャリアが停滞している
成長のチャンスがないなら、次のステップを探すことは自然な判断
3: 職場文化に違和感がある
上司との相性や企業風土に不満がある場合、長期的な働き方としては見直しが必要

この調査結果は、現在の職場に不満を感じている人々の生の声を反映しており、非常に興味深いデータです。しかし、記事の冒頭でも書いたとおり、以下のバイアスを考慮する必要があると思っているのでご留意ください。

  • サンプル数が少ない(865人)
    ニュージーランドの労働人口は約270万人(2025年時点)であることを考えると、全体を代表するには極めて限定的なサンプル数で、これをもって「ニュージーランド労働者の考え」とするには無理があると思っています。
  • 人材紹介会社による調査
    Robert Waltersは人材を求める企業と転職希望者をマッチングさせることをビジネスとしています。その会社の調査に回答するのですから「すでに転職に前向きな人」が回答者に多く含まれている可能性があります。

ニュージーランドで生き残るマネー戦略

まとめ:感情ではなく、戦略で「辞め時」を見極める

今回の調査から見えてきたのは、ニュージーランドでは多くの人が「現状維持では生活が苦しくなる」と感じているという現実で、過去に「昇給なしの常識 ニュージーランドで生き残るマネー戦略」で書いた内容をそのまま再認識するような形になりました。

ただし、「みんな辞めているから自分も」と感情的に動くのではなく、調査の背景自身の立ち位置を冷静に分析し、「生き残るためのマネー戦略」を立てることが今後ますます重要になってきます。

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ニュージーランドで生き残るマネー戦略ー「辞め時」の常識

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この記事を書いた人

ニュージーランド在住のビジネスサポーター
「ニュージーランドのお金」執筆・運営
堅実なデータをもとに経済・ビジネス情報を発信

NZ・豪・東南アジア・UAE・日本で市場調査や戦略設計を手がけ、スタートアップや成長企業の支援に携わってきました。

Xでは日本&NZの時事ネタやビジネスの裏話をゆるっと発信中。
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