クローズアップ 収入 ニュージーランドで暮らす日本人のお金事情 -国勢調査を紐解く-

お金

2023年7月、Trademeがニュージーランドの全国平均年収を70,069ドルと発表したことを受け、当ブログでは全国で最も高い・低い平均給与地域や急成長した年収の地域などを探りました。

この7万ドル超えというニュージーランドの全国平均年収ニュースを受けて、ニュージーランドで生活を築いている日本人の皆さんは、どのような思いを抱かれたでしょうか?

本稿では、普段あまり触れられない「お金」の話の中でも特に話題にしにくいニュージーランド在住の日本人の収入事情について掘り下げてみました。

日本の平均年収は国税庁によると461万円(=NZ$53,604 | NZ$1=86円換算)。ニュージーランドの平均年収NZ$70,069は日本のおよそ3割増し。

過去にニュージーランドに住む日本人永住者の数を探った記事を投稿していますが、

本稿を執筆するにあたり、永住者のみでなく「NZに住む日本人」の給料に焦点を当てるため、ニュージーランドの2018年国勢調査結果をベースに掘り下げていきます。

国勢調査は実施日にニュージーランドに「住んでいる」全ての人(旅行者は除く)が対象でビザの種類は問われていません。例えば留学生やワーホリビザで滞在している人も、私は今ニュージーランドに「住んでいる」と思えば、回答対象者です。

従い、国勢調査の邦人数とは、ビザを問わず、実施日に「私もNZに住んでいる」と自己申告した邦人の数です。

ニュージーランドの労働市場に日本人は何人いる?

2018年国勢調査で発表された在ニュージーランド邦人数やその他のデータをまずは整理して表にまとめたのがこちら。

表にまとめた数字は、2018国勢調査の結果を基にしていますが、調査結果の多くはパーセンテージで記されており、それを人数に換算していく過程で計算に影響がでている旨、予めご理解ください。
日本人に関する2018ニュージーランド国勢調査の原文はこちらからご覧いただけます。

在ニュージーランド全体男性女性
日本人数18,1446,84911,295
日本人生産年齢人口(人数)12,4504,0628,388
日本人生産年齢人口(NZ国内生まれ:人数)1,676 (13%)
日本人生産年齢人口(NZ国外生まれ:人数)10,971 (88%
日本人生産年齢人口 話せる言語の数:021 (0.2%)
日本人生産年齢人口 話せる言語の数:13,731 (30%)
日本人生産年齢人口 話せる言語の数:2+8,682 (69.8%)
ソース:2018ニュージーランド国勢調査 集計:ものかん

生産年齢人口とは、「社会を担う中核の働き手」となる15~64歳の人口層を指します。人工層の幅については OECD (Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)や国連の関連機関 ILO(International Labour Organization:国際労働機関)が定義しており、ニュージーランドもこれに準拠しています。

ニュージーランド全体の生産年齢人口は、2023年3月期(季節調整済み)の時点で国民全体の72%にあたる415万人。この内、0.3%にあたる12,450人がニュージーランドに住む日本人の生産年齢人口であり、またニュージーランドの労働市場に参加することができる日本人の数になります。

ニュージーランドの労働市場で実際に働いている日本人の数は?

2018年の国勢調査時にニュージーランドの労働市場に参加していた日本人労働人口は8,092人
日本人の生産年齢人口12,450人中、65%にあたる数で、その内訳は下記のとおり。

日本人労働人口人数
フルタイム5,017
パートタイム2,602
失業者473

後述しますが、残り35%にあたる4,358人は雇用も失業もしていない非労働力者です。

労働人口とは15歳~64歳までの人口のうち、雇用形態のフルタイムやパートタイムに関わらず就業者と失業者を合わせた人口のこと。

失業者とは有給の職には就いていないが就労可能であり、積極的に求職活動を行っている人を指します。

就業も失業もしていない人(例:学生、主婦/主夫、身体または精神的障害のため就労不可、退職・リタイア、いわゆるニートなど)は失業者ではなく、「非労働力」に分類されます。

ニュージーランドの労働市場で働いている日本人の年収は?

冒頭で述べたとおり、2023年7月にTrademeはニュージーランドの全国平均年収を$70,069だと発表しています。そして本稿で深掘りのベースとしているニュージーランド国勢調査が行われた2018年の全国平均年収はおよそ$61,000でした。

これを念頭に置いていただき、

2018年ニュージーランド国勢調査の結果に記されている日本人労働者の平均年収額をそのまま転載します。

ニュージーランドに住む日本人の平均年収は

NZ$17,900

言葉が出ない。。

と、なりましたが、

NZ$17,900は、日本人労働人口ではなく、日本人生産年齢人口12,450人がベースの平均年収でした。そりゃ低いだろうねという話です。

なぜなら、日本人生産年齢人口は、労働人口8,092人+非労働力4,358人で構成されており、つまり約三分の一は働いていない人たちで構成されている平均年収という事だからです。

フルタイムで働いている日本人の数

では何人の日本人がフルタイムで働いているのか?

という事で、日本人生産年齢人口12,450人を雇用タイプ別に分けた表を用意しました。

日本人生産年齢人口人数
非労働力35.0%4,358
フルタイム雇用40.3%5,017
パートタイム雇用20.9%2,602
失業中3.8%473
失業中:生産年齢人口のうち、有給の職には就いていないが就労可能であり、積極的に求職活動を行った人。
2018ニュージーランド国勢調査では2018年3月4日の時点で上記の定義に該当者を失業中としている。

フルタイムで就労している日本人は5,017人です。
過半数を大幅に下回る40%程しかいません。

非労働力に該当する方のうち就業不要な超富裕層がどの程度いるのか定かでないものの、日本人の平均年収がニュージーランド全国平均と比較して衝撃的に低い事を鑑みれば、その数が極めて低いことは想像にたやすく、また、フルタイム就労者が全体の過半数を下回る40%しかいないことも平均年収を押し下げる一因だと考えて良いでしょう。

が、

それでも、全体の40%はフルタイム就労者であることを鑑みれば、平均年収がNZ$17,900というのは低いように思います。

日本人の年収額 分布

そこで、国勢調査に記されていた年収額別の割合から、生産年齢人口に達している日本人12,450人がどれくらいの年収を得ているのかを表にまとめました。

年収範囲%人数
Loss or Zero20%2,516
$1-10,00019%2,391
$10,001-25,00019%2,380
$25,001-40,00016%2,006
$40,001-60,00014%1,781
$60,001-10,00008%1,022
$100,00-150,0002%225
$150,000+1%125
単位:NZ$
Lossは例として自営業者の事業損失や農家の災害等による損失、ローン返済等で支出が収入を上回ったなどが考えられます。

ニュージーランド全体の平均年収は$61,000(2018年国勢調査時)ですが、生産年齢人口に達している日本人12,450人のなかで$60,001を超える年収を得ている人は全体の11%にあたる1,372人で、89%は$60,000よりも低い年収を得ているという厳しい結果になっていました。

フルタイムで働く日本人の年収

フルタイム就労の日本人5,017人の年収は、2018年当時の最低時給$16.5を基に計算すると最低でも$34,414は保証されていたという事になります。

つまり、「ブラック企業は存在しない」という性善説に基づくならフルタイム就労の日本人5,017人全員が年収表にある年収範囲$25,001-40,000から上の枠に属しているという事です。

そこで、フルタイム就労の日本人5,017人を年収枠が多いところから順番に割り当てみたところ、下記の表のようになりました。

フルタイム
就労者 5,017人
年収範囲
該当人数
フルタイム
就労者数割当人数
フルタイム
就労者数割当%
パートタイム
就労者数割当人数
$150,000+1251252.5%
$100,00-150,0002252254.5%
$60,001-10,00001,0221,02220.4%
$40,001-60,0001,7811,78135.5%
$25,001-40,0002,0061,86537.2%141
単位:NZ$

この表から、フルタイム就労の日本人5,017人のうち27%が$60,001以上の年収を得ており、約73%は$60,000以下だと考えられます。

また、フルタイム就労者割当の中で、37.2%と最も多い割合になったのが$25,001〜$40,000の年収範囲ですが、フルタイム就労者の最低年収が$34,414であることを考慮すると、この年収範囲に該当するフルタイム就労者1,865人は、$34,414〜$40,000の収入を得ているとみなすことができます。

パートタイムで働く日本人の年収

国勢調査にはパートタイムの内容に踏み込んだ質問がないので詳細を知る術がありません。

そこで、2018年当時の最低時給$16.5から$1.5ずつ上げた時給に、週10、20、30時間労働した場合の年収をまとめ、年収範囲表で適用した枠にどれほどハマるかみてみました。

時給$16.5
年収
時給$18
年収
時給$19.5
年収
時給$21
年収
10h/ 週$8,604$9,386$10,168$10,950
20h/ 週$17,207$18,771$20,336$21,900
30h/ 週$25,811$28,157$30,504$32,850
緑、青、赤の色分けは年収枠$1-10,000$10,001-25,000$25,001-40,000に準ずる。
h/ 週 = 1週間に働く時間。10h/週=週10時間労働

この表からパートタイム就労者は年収範囲$10,001-25,000に該当する可能性が最も高く、次いで$25,001-40,000だと分かるので、ここからパートタイム就労者の年収分布を以下のようにまとめました。

パートタイム
就労者2,602人
年収範囲
該当人数
パートタイム
就労者数割当人数
フルタイム
就労者数割当人数
$25,001-40,0002,0061411,865
$10,001-25,0002,3802,380
$1-10,0002,39181

実際は、パートタイムで働く専門職の方も多く、時給$100、$200といった職種も存在しており、パートタイムだからといって受け取る給与が最低時給に近いとは限りません。

しかし、国勢調査による日本人の平均年収がNZ$17,900だという事や、年収額の分布をふくんで考えれば、例外はあれど多くは表にした時給額に近いと考えて良いと思います。

年収範囲 $1 – 10,000ドルの該当者と失業者について

年収範囲$1-10,000は2,391人中、81人がパートタイム就労者だと見立てると、残り2,310人は誰なのか?という事になりますが、ここまでに、フルタイムとパートタイム就労者を各年収幅に振り当てているので、必然に未割り当ての、失業中(473人)および非労働力(4,358人)が浮かんできます。

ここで「失業者」の定義を改めて、一言で表すなら、

「有給の職には就いていないが就労可能で、積極的に求職活動を行っている人」です。

この定義に該当する方は、Ministry of Social Development (MSD: 社会開発省)に申請することでJobseeker Supportという失業手当を受けられます。(具体的な失業手当の額と支給期間は、個人の状況や要件によって異なる)=収入があるということで、年収枠$1-10,000に入る可能性があります。

加えて、失業する前までは仕事を持っていた=収入があったはずなので、正確には失業者でも年収10万ドル以上ということも十分にあり得るため、失業者を年収枠$1-10,000に押し込むのは無理があります。

しかし、パートタイム就労者以上に、失業者の年収を探る手立てがなく、探りようもありません。

ですので、

間違っていると認識しつつ、仮に失業中(473人)を全員、年収枠$1-10,000の2,391人に押し込むと失業中473人+パートタイム81人で、年収枠$1-10,000には残り1,837人の割当枠が残ります。

収入が1年間に$1以上あった人がこの枠に該当することを考えれば、

学生や主婦/主夫、身体または精神的障害のため就労不可、退職・リタイア、ニートなどの分類上、「非労働力」に分けられる方が得た収入だと考えても何ら不思議ではありません。

例えば年間で1回だけ不用品をTrademeで売却した人がいれば、この方はおよそ$1以上の収入を得るでしょうから、国勢調査時にそれをIncomeだと申告したなら、年収枠$1-10,000に入る事になります。

ということで、

非労働力4,358人中、1,837人が副業して、年収枠$1-10,000に収まっていると仮定すると、

非労働力2,521人が残ります。

この2,521人は年収範囲分布表にあるLoss or Zero Income枠に該当する2516人とほぼ合致します。

非労働力=就業も失業もしていない人 というのは間違いありませんが、非労働力=無収入とは限りません。不労所得のみで生活する投資家や、すでに資産を形成して就業の必要がない資産家なども、労働していないため「就業者」ではなく、また、就業の意思もないので、「失業者」でもないため、「非労働力」カテゴリーに属します。

そのような人だけでなく、例えば、不要になった品をTrademeで売却したり、家の空き部屋を使ってAirbnbのホストをして収入を得ている学生や主婦・主夫もいる事でしょう。

ニュージーランドの労働市場にいる日本人の収入源

今の時代なら稼ぐ方法はいくらでもある。という言葉を裏付けるように、実際、ニュージーランドに住む日本人は様々な方法で収入を得ており、複数回答可の状態で回答数がNZ国内外生まれぞれぞれ130%程になっているということは複数の収入源を持っている人が一定数いる事を示しています。

他方、収入源なしと答えた人がおよそ20%、約2,400人いました。

年収範囲分布の表を作成する際、Loss or Zero枠としてまとめた項目がありますが、
国勢調査では個別にLoss 0.8%、Zero Income 19.4%という結果が記されています。
このパーセンテージを人数に置き換えると、Loss 100人、Zero Income 2,416人になるので、収入ゼロと回答した人と、収入源なしと回答した計約2,400人がほぼ合致しています。

収入源NZ国内
生まれ
NZ国内
生まれ
人数
NZ国外
生まれ
NZ国外
生まれ
人数
該当人数1,67610,971
収入源なし21.636218.72,052
賃金、給料、歩合給、賞与等64.91,08859.56,528
自営業7.913213.11,437
利息、配当、家賃、その他の投資9.315614.81,624
労災保険からの支払い1.1180.333
年金(Superannuation)0.583.8417
その他の退職年金001.9208
失業手当4.9821.1121
Sole parent support2.0341.5165
Supported living payment2.6441.0110
Student Allowance11.01841.8197
その他の政府手当3.5593.9428
その他の収入源1.6272.8307
複数回答のため合計は100%を超えています

まとめ

2018年の国勢調査結果を基に探ってきた日本人に関するデータをまとめておきます。

在ニュージーランド 日本人
人口18,144
生産年齢人口12,450
労働人口8,092
フルタイム就労者数5,017
フルタイム就労者 年収$60k+27%
フルタイム就労者 年収$40-60k36%
フルタイム就労者 年収 $34,414〜$40k37%
パートタイム就労者数2,602
パートタイム就労者 平均年収幅$10-25k
ソース:2018ニュージーランド国勢調査 集計:ものかん

ものかんのつぶやき

今回はニュージーランドで暮らす日本人のお金事情と題して、2018年に行われたニュージーランドの国勢調査をもとに収入をクローズアップした結果、フルタイムで働く日本人の73%が、当時のニュージーランド全国平均年収6.1万ドルを下回る、$3.4〜6.0万ドルの範囲の年収で生活しているであろうことが明らかになりました。
実際は年収$6.0万ドル以上の27%に属す人の中にも、全国平均年収6.1万ドルに届かない方が一定数いるはずなので、フルタイムで働く73%以上の日本人が平均年収に届いていないと考えられます。

そして、2018年から2023年の今に至る5年のあいだ、ニュージーランドは経済成長率平均3.1%という高水準で景気回復が見られているものの、コロナ禍のロックダウンによる移民流入激減が、企業にとっては国内にいる労働者争奪戦となって賃金上昇に拍車をかけ、失業率を近年最低水準に押し下げながらニュージーランドの全国平均年収は5年で61,000ドルから70,069ドルと15%も上昇。

しかし、経済成長率平均3.1%という国内経済活動の回復=国内需要の高まりであり、これと並行して原油価格の高騰が、インフレ率の急上昇を招いて、いまも家計を圧迫しています。

労働者側からすれば、

このタイミングで転職または賃上げ交渉をして年収を引き上げずに、いつするのか?

という状況になっていました。

これはニュージーランド全体の労働者に当てはまる話ですが、日本人のフルタイム労働者の中で2018年の時点で年収が$34,414〜60,000ドルの範囲に該当している可能性が高い73%の方々は、この5年間で最低時給額以上に毎年交渉で昇給を勝ち取るなり、転職して年収を上げるなり、また自営者なら値上げやマーケティングによる顧客離れ防止に注力していなければ、物価上昇に追いつけず、決してラクとは言い難い金銭状態で今を過ごしていると思われます。

当ブログでは、ニュージーランドの日本人コミュニティに向けて、経済、雇用、生活に関する情報を発信することで、多くの日本人がより安定した豊かなニュージーランド生活を送るための行動を後押しする役割を担えることができれば良いと考えています。どうぞお役立てください。

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