当ブログは主にニュージーランド(以下、NZ)の金融・経済をはじめとする「お金」にスポットを当てており、特に人気があるのは個人の年収に関連する記事です。
NZで働く日本人のみなさんも、「自分の年収は、この国では多いのか、少ないのか?」と一度は気になったことがあるのではないでしょうか。これは、国籍を問わず多くの人が関心を寄せるトピックです。
以前2023年7月に「ニュージーランドの平均年収が7万ドルを超える」という記事を書きましたが、Stats NZの最新(2024年12月)の統計では、全国の平均年収は $68,120 となっていました。
しかし、この数字には15歳のいわゆるバイトから、年金受給世代まで含まれているため、働き盛りの世代の実態とは異なります。
本記事では、Stats NZが公表したNZの年齢層別のリアルな平均収入を基に、日本人永住者が知っておきたい年齢層別の収入目安と、今後のキャリアを戦略的に築くための具体的なヒントをご紹介します。
ニュージーランドの年齢層別・平均収入の実態
NZの平均年収は年齢と共に徐々に増え、30代半ば以降〜50代前半までが高収入層を形成します。その中でも40代半ば〜後半にピークを迎えるのが平均的なパターンです。
55歳以降は、それまでに培った経験や人脈を活かし、次世代に知見を伝えながらリタイヤに備える「熟練層」への移行していく流れがみてとれます。

上記はすべて「平均」です。
業種や職種、地域差によって大きく変動することがあるので目安としてご覧ください。
収入ピークは45~49歳。 では、勝負の時期はいつか?
データが示す通り、平均では40代で収入の頂点を迎えます。
では、そのピークをより高く、より確実なものにするために、最も重要な「助走期間」は一体いつなのでしょうか?
収入の「伸びしろ」が最大になるゴールデンエイジは?
結論から言うと、最も重要なのは20代、社会人としての経験を積み始める20代前半から後半にかけての時期です。
この時期は、学生気分が抜け、仕事への責任感やプロ意識が芽生えると共に、スキルや成果が収入に直接反映されやすくなります。また、昇進、転職、独立、結婚などといったライフステージの変化も多く、収入改善を強く意識するタイミングでもあり、キャリア人生における「ゴールデンエイジ」と言えます。
なぜ、この時期が重要な「ゴールデンエイジ」なのか?
今回のStatsNZのデータを基に分析すると、その答えは明らか。
20代でどれだけ収入を伸ばせたかが、40代での収入の「到達点」を大きく左右するからです。
年齢区分 | 収入増加額(年収ベース) | 年平均増加率(CAGR) |
---|---|---|
20〜24歳 → 25〜29歳 | $12,480 | 4.24% |
25〜29歳 → 30〜34歳 | $6,240 | 1.82% |
30〜34歳 → 35〜39歳 | $3,900 | 1.05% |
35〜39歳 → 40〜44歳 | $3,068 | 0.78% |
40〜44歳 → 45〜49歳 | $0 | 0.00% |
この数値が示すのは、キャリア初期の「ボーナスステージ」とも言える20代の伸び率が、他の年代を圧倒しているという事実。
重要なのは、この年4.24%という増加率もあくまで「平均値」であるという点。
平均以上の収入を目指すのであれば、この期間に年5%以上の昇給ペースを目標に、戦略的に動く必要があります。
- 給与の伸びしろが少ない業界なら、成長業界への転職も視野に入れる
- 今の会社で目標昇給率が難しいなら、転職で一気に年収を上げる
- 昇給・昇進の交渉を恐れず、準備して臨む
- 常にスキルを磨き、自身の市場価値を高め続ける
この時期の行動が、将来の収入ピークを大きく引き上げるカギとなります。
収入アップと同時に始めるべき「資産形成」という次の一手
年収アップの努力と並行して、資産形成も早い段階から意識することが極めて重要です。NZでは、年金(NZ Superannuation)制度はあるものの、個人の自助努力による備えが強く求められます。
「収入の一部を“働かせる”」という発想をもつ
「まだ貯金も少ないし、投資は早い」と感じるかもしれません。しかし、少額からでも始められる資産形成の選択肢が、NZには数多く存在します。
- ETFや株式投資: Sharesies や InvestNow を通じて、少額から国際分散投資が可能です。
- 住宅購入: KiwiSaverやFirst Home Grantを活用すれば、若年層でもマイホーム購入の道が開けます。長期的には家賃支出の削減と資産化が期待できます。
- KiwiSaver(キウイセーバー): 任意加入の退職金貯蓄制度。給与天引きで自動的に貯蓄が進み、雇用主や政府からの拠出(上乗せ)も得られます。
重要なのは、「貯蓄」から一歩進んで、「収入の一部を“働かせる”」という発想を持ち、実行することです。
資産形成は、人生の選択肢を広げる力になる
資産形成の目的は、老後のためだけではありません。金銭的な制約から解放され、「選べる人生」をより早く手に入れるための手段です。
想像してみてください。
金銭的な余裕が生まれれば、キャリアや人生そのものに悩んだ時に、より柔軟な選択が可能になります

子育てや介護のために、一時的に仕事から離れる判断も、金銭的な余裕があるなら選択肢としてアリになります。

金銭的な余裕があれば、本当にやりたかった仕事に挑戦するために、一時的に収入が減るけど、それでもやるという選択肢がアリになります。
収入が増え始めたら、生活費を上げすぎず、意識的に「収入を現金のまま置いておかずに資産に変える力」を身につけてください。「現金」はインフレで価値が目減りしますが、「資産」は時間を味方につけて価値を増やせる可能性があります。

NZ人が「貯金はあまりない」と話す背景には、単なる浪費だけでなく、「現金を消費するのではなく、資産に転換する」という考え方が、長いインフレの歴史の中で根付いているからだと言えます。
お金に縛られる人生ではなく、お金を自分やパートナー・家族のために働かせ、自分が本当に望む人生を自由に選択できる未来を築いてください。
日本人移民者特有の壁を乗り越えるキャリア再構築戦略
ここまでの内容は、あくまでNZ全体の傾向をベースにした話です。
しかし、日本からの移民者、とくにワーキングホリデーや学生ビザで渡NZした方の場合、「収入を伸ばす」、「資産形成を始める」といったステップに進むには、いくつかの壁を越える必要があります。
多くの日本人移民が直面する現実
ローカルのKiwiがキャリアの助走期間として収入を伸ばす20代後半から30代前半。
この時期に、多くの日本人はビザ取得を最優先に行動する傾向があります。
- ビザ優先の職業選択:まずは雇用主スポンサーを得るため、必ずしも希望ではない、あるいは給与が低い職種を選びがちです。
- 低賃金労働の継続:ビザ縛りなどのために同じ職に留まり、昇給やキャリアアップの機会を逃してしまうケース。
- スキルと人脈の壁:昇進や専門職への移行に必要な、英語力、NZで通用する資格、そして人脈が不足。
その結果、30代〜40代でようやく永住権を取得しても、「ビザのために選んだ仕事」から抜け出せず、キャリアの再構築に苦労するケースが少なくありません。
永住権取得はゴールではなく、「リスタート」の号砲
永住権の取得は、NZ国内で「職業選択の自由」を得たことを意味します。
これはゴールではなく、本当のキャリアを築くためのスタートラインです。
しかし、あなたが30代半ばでスタートラインに立った時、同年代のKiwiはすでにキャリアの中盤で管理職や専門職として活躍しているので、準備なしに「さて、これからどうしよう」では、差は開くばかりです。
リスタートに向けて、永住権取得前から準備すべきこと
現職での昇進や専門職化を目指すなら
- 必須資格の先行取得: NZで求められる資格やスキルは、リスタート前に取得を完了させておく。
- 人脈形成: 業界のイベントなどに参加し、社外にも人脈を広げておく。
別業界への転職を目指すなら
- リスキリングの証明: 新しい分野の資格やコース修了証など、学習の成果を形にしておく。
- ポータブルスキルの棚卸し: 前職で培ったプロジェクト管理、顧客対応、チーム運営などの「横展開できるスキル」やビジネスリテラシーを言語化し、アピールできるように準備する。

資格とは、あくまでNZで通用する資格です。
日本の資格がそのまま評価されるケースは多くありません。
「現状維持=安定」ではない。NZ流キャリア戦略への意識転換
日本では「現状維持=安定」という価値観が根強いかもしれません。
しかし、恒常的に物価が上昇するNZでは「現状維持=実質的な後退」を意味します。

流動性の高いNZの労働市場では、戦略的なキャリアプランこそが、生活を安定させる土台になります。

私も移民として、「永住権取得」が最優先になる気持ちはよく分かります。しかし、取得はゴールではなく、ようやく対等な競争ができるスタート地点です。ライバルが遙か先を行っていることを理解すれば、スタートまでの期間に何も準備しないという選択肢はないはずです。
「この仕事を3年続けたとき、自分の市場価値はどうなっているか?」この問いを常に自分に投げかけ、計画的な行動を心がけてください。
まとめ:今日から始めるアクションプラン
NZで豊かで安定した生活を築くには、計画的なキャリア構築と資産形成が不可欠です。
本記事の要点を、具体的なアクションプランとしてまとめました。
1. 自分の現在地を知る
- まずはこの記事の年齢別収入データを見て、自分の収入が平均と比べてどの位置にあるか客観的に把握しましょう。
2. キャリアの方向性を再設計する
- 永住権取得は、キャリアをリセットし、「本当にやりたい仕事」や「将来的に給与が伸びる分野」へシフトする絶好のチャンスです。
- 「業界内での昇進」「専門職への転身」「成長分野への転職」「独立起業」など、複数の選択肢を検討し、自分にとって最も「伸ばせる道」を選びましょう。
3. 当地でのネットワークを構築する
- 人口が少なく、繋がりが重視される社会です。日本人コミュニティだけでなく、現地のイベントや勉強会、スポーツクラブなどに積極的に参加し、多様な人脈を築きましょう。思わぬ情報や仕事のチャンスに繋がります。
4. 少額からでも資産形成をスタートする
- KiwiSaverへの加入や、Sharesiesなどで月々数十ドルからでも投資を始めましょう。「収入の一部を働かせる」習慣を今すぐ作ることが、将来の安心に繋がります。
これらのステップを意識し、年齢とライフステージに合った目標を立てて行動することで、NZでの人生は、より自由で豊かなものになる得ると思います。