「結婚したけど、名前ってどうやって変えるの?届け出必要?」
「ニュージーランドでは改名ってどうやればいいの?」
NZで暮らす日本人なら、一度はそんな疑問を持ったことがあるかもしれません。
そんな中、ある日X(旧Twitter)で「ニュージーランドって、結婚しても届け出なしで苗字変えられるんだね?」という投稿を見かけて、思わず「さすがにそれはないでしょ」とツッコミを入れたくなったんですが…
よく考えてみると、ニュージーランドには日本みたいな戸籍制度がないし、普段からニックネームで通してる人も多い。ということは、もしかすると改名も日本の常識が通じないほど簡単にできてしまうのでは?
ということで、改めて調べてみたところ、もはや名前ってなんなの?IDってなに?ってレベルでNZの改名制度は驚くほど自由でシンプルであることがわかりました。
本記事では;
- NZで「自分の意思で」名前を変えるにはどうするのか?
- 結婚で苗字を変えるとき、日本とNZで制度はどう違うのか?
- 日本の戸籍との整合性はどうなるのか?
といった疑問に答えながら、日本人がNZで改名するときに注意すべきリアルな落とし穴も解説しています。
「苗字変えたいけど、どこから手をつけていいか分からない」
「NZで改名したら、日本ではどうなるの?」
そんな方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事では主に、結婚による苗字の「変更」ではなく、本人の意志による「改名」について記しています。
記事中にある「名前」とは、苗字(姓)と名前(名)の両方を指します。
断りがない限り、完全フルネームの姓名/氏名も、姓または名 いずれか片方だけの場合も、「名前」と表記しています。
本記事は2026年7月時点の情報をもとに執筆しています。内容はニュージーランド政府の公式サイトに掲載された情報に基づいておりますが、情報の正確性・信頼性・完全性を保証するものではありません。
記載内容に誤りや不足があった場合でも、当方ではその責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
改名をご検討される場合は、必ずご自身で最新の公式情報をご確認いただき、内容を十分にご理解のうえで慎重に判断されることを強くおすすめします。
ニュージーランドで名前は変えられるのか?
答えをはじめに書くと、18歳以上のニュージーランド国籍者および永住者なら「正式な届け出」を行えば誰でもかんたんにLegal Name(法的氏名)を改名することが可能です。

Legal Nameとは出生届と共に国に提出する名前のことです。ニュージーランドならBirth Certificateに記載されている名前。日本なら戸籍に記載されている名前を指しています。この事を念頭に置いて読みすすめてください。
しかし一方で、Xで見かけた「ニュージーランドで結婚したら苗字変えるのって正式な届け出が必要ないんだね?」という理解も、「ニックネーム(以下、通称)としてなら」正しいといえます。

説明としては逆パターンになってしまいますが、
日本で結婚した後も仕事を続けていくうえで旧姓を使用し続ける事が散見されるのと同様で、「今は正式な新姓があるけど、仕事の上では便宜もあり旧姓を通称として使い続けている」という事ですね。
正式な改名について興味を持たれた方は注意点もあるので、以下をご一読のうえ、必ず正式なニュージーランド政府のサイトも確認してください。
名前 の 正式 ー 非正式
NZで生活するうえで「名前」には、Legal Name(法的氏名)と通称の2つあり、前者が正式なLegal Name、後者が非正式ないわゆるニックネームだと心得てください。
正式名 ー Legal Name 法的氏名とは?
パスポート・運転免許証・IRDや銀行口座などで使用する、国に登録されている法的な名前のことをLegal Nameといい、これが正式な名前です。日本なら「戸籍」に登録されている名前が法的氏名なので「Legal Name = 戸籍上の氏名」と同義と捉えて良いと思います。
非正式名 ー 通称(ニックネーム)
日本で通称といえば公の場で使うことのない、仲間内の呼び名や子供の頃のあだ名などが思い浮かぶ方も多いと思います。
ニュージーランドでは(公の種類にもよりますが)、ビジネス上でも通称が名前として使われている事が多々あり、実は本名を知らないというケースもよくあります。
*正式なLegal Nameを使っている人が多いですが、通称を使っている人も相当数いるという意味です。

通称を使って生活してる人なんてそんなにいるの?という方は、移民の名前でイメージすると分かりやすいと思います。
パスポートに記載されている本名とは全く異なる英語名を名乗って日常生活を送っている方も多くいますよね。なかにはそれが正式名という方もいますが、通称である方も多いです。

書類などの名前記入欄でも、法的氏名が必要か否かで「Name」または「Legal Name」と分けて記されていることがあります。
Legal Name(法的氏名)を改名するには
日本人の一般的な感覚だと、結婚による苗字の変更や、生活に明らかな支障がある場合など特別な理由が認められた場合に限り改名は許されるというイメージではないでしょうか。
しかしニュージーランドの場合、18歳以上の方なら「名前変えたいな」と思ったらほぼ自由に、郵送でLegal Nameを変えることが可能。18歳未満も保護者の同意があれば改名できるようです。
手数料NZ$170を支払い、ニュージーランド政府機関のBDM(Births, Deaths and Marriages)に申請し、受理されるのを待って改名完了(2025年7月時点)。
新たな名前の選択については下記のような制限もあるようですが改名そのものに制限はなさそうです。
ニュージーランドでは「King」「Queen」「Prince」など王室を連想させる名前が法律で禁止だそう。が、アメリカはOKで人気上昇中。命名にも文化とルールの違いがあって面白い。
— ものかん@ニュージーランド (@nznomoney) May 16, 2025
ちと違うが、日本で「悪魔」と名付けようと出された出生届を役所が拒否したニュース思い出した。https://t.co/pedQvfJY5o
改名するとどうなる?
NZ生まれの人は改名履歴がBirth Certificateに紐づいて記録されるそうです。
そして改名後は、改名前の自分と、今の自分が同一人物であると認知してもらうために、パスポートや運転免許証、IRDや銀行など必要なところでそれぞれに改名を届けでなければいけません。
同一人物である証明として
NZ生まれの人は前述したBirth Certificateが必要となり、
NZ国外生まれの人はName Change Certificateを別途発行申請し、取得後に関係各所て名義変更を行うという流れのようです。
ここでの詳細は省きますが、気になる方は下記NZ政府サイトをご覧ください。

NZ国外生まれの人は・・・という事は?
前項では「NZ国外生まれの人が改名した場合はName Change Certificateを取得して~」と書きました。
つまりNZで出生届を出していない人でもNZにおけるLegal Nameの改名ができてしまいます。
ニュージーランドで生まれていない人(移民を含む)の場合
NZ国籍を持つ親がNZ国外で子を産んだケースが想定されているのはもちろんですが、それだけに限らず、
日本を含め諸外国からNZに移り住んできた移民の場合はどうなるのかが、NZ政府サイトに次のように記されています。
You can change your own name in New Zealand if you’re 18 or over and a citizen or entitled to live here indefinitely.
ーーー 18歳以上のNZ国籍者およびNZ永住者は名前を改名できる

NZに永住している日本人も正式に改名できると書いてあるのと同じ!
捉え方の留意点
NZで生まれていない移民者には、NZ国内の出生届(Birth Certificate)は存在しません。
つまり、移民者のLegal Name(法的氏名)とは、NZ政府に正式に「出生登録された名前」ではないものの、出生国で登録して認められたパスポート名を、そのまま移民局やIRDなどが公式書類上の名前として記録・使用しているものです。
このため、BDM(Births, Deaths and Marriages)には移民者のLegal Nameの記録も一切存在していないのです。
言い換えれば、BDMは移民者の出生記録を持っていないので、ある意味で全員 “Mr./Mrs. No Name”です。
ニュージーランドの永住権を持ち、生活して税金も納めているので、NZ政府があなたの名前を扱っているように見えても、それは移民局やIRDなど個別機関が各自のデータベースで保持しているにすぎません。
したがって「NZ永住者は名前を改名できる」という記述は、正確には「NZ永住者は 新しい名前をBDMに“初めて”登録し、それをNZ国内の公式なLegal Nameにできる」という意味に捉えた方が実態に近いです。

NZに出生登録のない移民者( Mr./ Mrs. No Name )は、たとえ名前を改名しなくても、現在の名前を“NZのLegal Name(法的氏名)として初めて正式に登録”する事もできるという事でもあります。
ただし自分が生まれた国で認められたLegal Name=パスポート名です。多くの公式手続きでは「現在有効なパスポート」があれば法的証明として十分であることから、敢えてNZのLegal Nameとして登録するメリットはないと思います。
日本人がNZで改名するのは慎重に考えてから
ここまで読んで「えっ、NZなら別人として生まれ変われるの?」とワクワクした方、ちょっと待ってください。
たしかに日本の常識とは大きく異なり、ニュージーランドでは改名が自由にできる仕組みがありますが、在NZ日本人にとっては安易に改名してしまうとそこに大きな落とし穴も潜んでいます。
ここからは、日本の戸籍制度がいかに厳格で、氏名の扱いがどれほど重たいか。
そして、日本の戸籍と異なる名前をニュージーランドで登録した場合に何が起きるかを見ていきます。
日本の改名制度:家庭裁判所の許可が必須で厳格
日本では、名前は戸籍と紐づいた、ある意味で「法的な身分」そのもので、改名は自分という存在を再定義するに等しい重たいレベルであるため、改名申請は家庭裁判所での審査が必要で極めて正当な理由が求められます。
日本の特徴
- 名前を変えるには家庭裁判所の許可が必須
- 許可されるのは「やむを得ない理由」がある場合のみ
- そのため簡単に名前は変えられない
- 結婚に伴う姓の変更は婚姻届によるもので改名とは別物

どのような理由なら許可されるのか調べてみたところ、「やむを得なさ」のハードルは想像以上に高く;
👉️社会生活に著しい支障がある
👉️本人確認で頻繁にトラブルが起きている
👉️いじめやDVの被害者など改名が事実上の身の安全に関わる
など、誰もが「やむを得ない」とうなずくレベルの理由でないと許可は下りなさそうです。
日本生まれのニュージーランド永住者にとっての改名リスク
日本で生まれ、NZに永住している人がNZで改名を行うと、「二重氏名」の状態になることがあります。これは、ニュージーランドと日本で異なる名前が法的に存在するということで、本人確認が一貫しなくなり、さまざまな手続きで支障をきたす可能性があります。
たとえば、NZでは改名後の名前が運転免許証などのすべての公的書類に使われるのに対し、日本では戸籍上の名前が引き続き「正式な名前」として扱われます。
そのため、「名前の不一致」が混乱をまねき将来の大きなハードルになる恐れがあります。

混乱が生じるであろう分かりやすい例を挙げると、NZで純粋なる身分証明としてパスポートと運転免許書の両方の提示を求められた場合や、自分名義の2国間海外送金、日本での相続手続きなど、日本側で戸籍名との一致が求められる場面で、小さくない混乱と手間が生じる事が想像できます。
こうしたトラブルを避けるためには、NZでの改名が将来的に日本側の手続きにどのような影響を与えるかを事前によく理解しておくことが重要です。
なお、NZで改名した名前を日本の戸籍に反映させるには、日本の家庭裁判所に申請し、正当な理由が認められなければなりません。この手続きは厳格で、たとえNZで正式に名前を変えていて既成事実があると言っても、日本でも必ず認められるとは限りません。
考察:ニュージーランドで改名後、日本戸籍名も改名できるか?
慎重に検討した結果、NZで正式に改名し、その新しい名前を日本の戸籍にも反映させたいという方もいるでしょう。
では、長年ニュージーランドで生活し、すでに新しい名前で社会的な基盤を築いているなかで、NZと日本で異なる法的氏名を持つことによって「本人確認のトラブルが頻発している」という現状を理由に、日本の家庭裁判所へ改名申請を行った場合はどうなるのでしょうか?
結論としては、すでに述べたとおり、日本の家庭裁判所の判断次第です。
もし「極めて正当な理由」として認められれば申請は受理され、日本の戸籍名も念願のNZの正式な名前に統一され良かったとなります。
しかし、もし「却下」されたなら、NZではすでに新しい名前で生活しているのに、日本の戸籍上は変わらぬままという、二重氏名の状態が続くことになります。
つまり、1人の人物に2つの法的氏名が存在する不自然な状態を、制度的に日本側が継続させる決定を下したのと同義で本人確認のトラブルが以後も続く事になります。
では、どうすべきか?
NZで改名を検討するなら日本との関わりを今後どう持ち続けるか(または持たないか)を熟考すべきです。
今後も日本の戸籍を維持し、日本との往来や関係を重視するなら、改名には慎重になるべきですし、逆に、今後、日本に戻る予定がないまたはNZ国籍を取得するつもりだ等、自身を完全にNZ化させるのであれば、改名による生活利便性を優先する判断も考えられそうです。

余談ですが、本記事を書きながらニュージーランドの改名制度の自由さを象徴するような人物として、オンラインストレージ「Megaupload」創設者のキム ドットコム(Kim Dotcom)氏を思い出しました。
彼はドイツ出身のニュージーランド永住者で、著作権侵害やマネーロンダリングなどの罪でアメリカにより起訴され、NZ警察に逮捕された人物。当時「.comってそんな苗字あるのかよ!?」と強烈な印象をもちました。実はこの.comという姓こそ、彼がニュージーランドで改名制度を利用して、本名のキム シュミッツ(Kim Schmitz)から改名したものです。
婚姻による苗字の変更は「改名」とは別の制度
2025年7月時点の日本のルールでは、苗字の変更は「結婚に伴う氏の変更」に該当し、これは改名(名前の変更)とは明確に区別されます。 そのため、日本では結婚によって姓を変える場合、家庭裁判所の許可は不要です。
ニュージーランドで日本人同士が結婚した場合の日本への届出と姓の扱い
ニュージーランドで婚姻し、その内容を日本の戸籍にも反映させたい場合、以下の流れで手続きを行う必要があります。
- ニュージーランドの制度に従って:
- Marriage Licence(結婚許可証) を取得し、認定された祭司立会いのもと挙式
- 挙式後、Marriage Certificate(婚姻証明書) を取得
- 在ニュージーランド日本国大使館または領事館にて:
- 上記の Marriage Certificate を添付 して、日本の婚姻届を提出
- 婚姻届の「婚姻後の夫婦の氏」欄で、どちらの姓を名乗るかを選択
ニュージーランドで外国籍者と結婚した日本人が正式に外国籍姓に変更する流れ
前提条件
- 日本人配偶者は日本国籍を保持(永住者ではあるがNZ国籍ではない)
- 相手はNZ市民またはNZ永住権保持者
- NZで法的に結婚する
- 結婚を機に、日本の戸籍上でも配偶者の姓に改姓したい
Step1: ニュージーランドで正式な結婚手続き
- Marriage Licence(結婚許可証) を申請
- 登録された司祭立会いのもと結婚式を行う
- Marriage Certificate(婚姻証明書)発行
Step2: 日本の戸籍に婚姻を反映
- Marriage Certificateを準備
- 在NZ日本国大使館・領事館に以下を提出:
- 日本の婚姻届
- Marriage Certificate
- 身分証明書など
これで日本の戸籍に「外国人との婚姻」が記載されますが、この時点ではまだ日本の苗字は変わっていません。
Step3: 外国人との婚姻による氏の変更
婚姻成立日から3か月以内に、在NZ日本国大使館・領事館へ「外国人との婚姻による氏の変更」を提出
これにより、日本の戸籍上の姓が配偶者(外国籍者)の姓に正式に変更されます
Step4: 新姓の日本パスポートを取得
改姓後の戸籍が反映されたら、大使館等で新しい姓の日本パスポートを申請すれば、日本の戸籍上の姓が配偶者(外国籍者)の姓に正式に変更されたことも確認できます。
新しい姓の日本パスポートに記載されている名前が日本における戸籍上のLegal Name(法的氏名)であり、同時にニュージーランド含め世界中でもこれをLegal Nameと認識するため、次に記すStep5をやらなくても支障は何らありません。気持ちの問題と捉えて良いかもしれません。
Step5: ニュージーランドでの正式な改名
- NZのBDM(Births, Deaths and Marriages)へ改名申請
- 申請が受理されたらName Change Certificateを別途発行申請し、取得後に関係各所て名義変更を行う
ここまでやると、日本側とNZ側両方の国で、完全に同じLegal Nameを登録したことになります。
逆パターンの場合:外国人が正式に日本人配偶者の姓に変更するには
外国人は日本の戸籍に入ることはできませんが婚姻関係を戸籍に記載させることが可能。
前提条件
- 外国人=NZ市民
- 日本人配偶者は日本国籍を保持
- NZで法的に結婚する
- 結婚を機に、日本の戸籍上でも日本人配偶者の姓に改姓したい
*外国人=NZ人としたのは、該当者の国籍により制度も異なり全体把握は不可能なためです。
Step1: ニュージーランドで正式な結婚手続き
- Marriage Licence(結婚許可証) を申請
- 登録された司祭立会いのもと結婚式を行う
- Marriage Certificate(婚姻証明書)発行
Step2: ニュージーランドでの姓変更
下記は「外国人=NZ国籍者」が行う手続きです。
- NZのBDM(Births, Deaths and Marriages)へ日本人配偶者の姓に改名申請
- 改名申請が受理されたらNZ生まれの人はBirth Certificate、外国産まれのNZ人はName Change Certificateを発行申請
Step3: 日本の戸籍に婚姻を反映
- Marriage Certificateと姓変更の証明書類を準備
- 在NZ日本国大使館・領事館に以下を提出:
これで外国人は戸籍に属さないものの婚姻情報として記載され、NZ国籍者でも日本人配偶者の姓を名乗ることが制度的に可能です。
最後に
名前の変更は、生活の質や自己表現に大きく関わる重要な決断です。
ニュージーランドの改名制度の自由さは魅力的ですが、日本の戸籍上の名前との違いによる混乱や手続きなどのリスクを理解したうえで、慎重に検討してください。