[経済] 水害からの復興と労働党の支持率回復

経済

今年10月に総選挙を控える状態で、1月にアーダン首相が辞任を表明。

ものかん
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モスク襲撃事件やコロナ禍の対応など、国民に寄り添いよくやってくれたと思います。初動の速さやリーダーシップは高く評価され続けるべき。

だけど、国家運営の結果だけをみれば、経済回復はスローペースで人手不足が叫ばれ、人が足りないから人件費も物価も爆上がりし、物価上昇を抑えるために政策金利を上げれば不動産価格が下落し路頭に迷う人が生まれてしまうという今の流れでは、誰が首相をやっていても、それが現政権の労働党であれ、政権奪回を狙う国民党であれ、支持率低下を食い止めるのは厳しいだろうなぁ と思います。

だからこそ、10月の選挙でも労働党が政権を維持するための布石として陣容をリフレッシュする事で支持率の低下を抑え、回復につなげる新たな筋道が必要だったのだろうと。

今回、その矢面に立ちアーダン氏から首相の座を引き継いだ1978年生まれのヒプキンス氏。アーダン政権で重要な大臣職をいくつか歴任して功績をあげていた人です。

学生のお子さんが居る方には、ヒプキンス首相は2017年から2020年まで務めた教育大臣時代にこんな功績を残している人だと覚えると良いかも。

- 学校のDecile制度を撤廃

- 16のPolytechnicとInstitute of TechnologyをNew Zealand Institute of Skills and Technologyに統合した人

教育大臣として改革を行った後に保険大臣に任命され、コロナ禍のパンデミック対応を指揮しました。PCR検査や追跡アプリ、ワクチンパスの使用など一連の取り組みを行ったのもヒプキンス首相です。

ものかん
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コロナ封じ込めの対応については「良し」と言う人と、「悪の元凶か」と言う人に分かれるかもしれませんが、ともあれ、政治家としてリーダーシップと公共サービスへのコミットメントをこなしていく「優秀な人物」感があります。

それでも、人は誰もが完璧ではないのが世の常識。

ヒプキンス氏は学生時代、政策に対する抗議運動による逮捕歴があったり、教育大臣時代に上述した16の学校を統合した結果、学校は入学者数の減少、巨額の赤字、上級職員の辞任などの困難に直面し始めているとか、保険大臣時代にはジャーナリストの個人情報を無断で公開した疑いから辞任に追い込まれたこともあるようです。

そんなヒプキンス氏ですが、首相就任3日後に暴風雨による洪水がオークランドを襲い、さらに2週間後には「200年に1度」レベルと評されたサイクロン ガブリエルが北島の広範囲で家屋に被害をあたえ、無数の世帯が道路、飲料水、電力、電話、インターネットなどへの接続を失う甚大な被害となりました。

就任直後に想像していなかったであろう国家非常事態宣言を発令する程の危機に国が見舞われる試練。

ものかん
ものかん

新米船長が外洋デビューで観測史上最大級の嵐に遭遇してしまいガチでヤバいみたいな感じ?

無論、首相に求められる事は様々あるでしょうが、経済の視点では

  • 早期の復興支援策だけでなく、
  • 移民受け入れによる人材確保
  • 人件費上昇に負けない経済成長
  • インフレ率を目標値に収めて物価上昇を抑え
  • 同時に不動産価格の下落も抑え
  • 為替を安定させる

というのが早急に対応を求められる部分だと思います。

そして国が復興支援策で捻出する金額は現段階ではかり知れず。

複数メディアが被災前の状態に戻すだけで最低でも1billion NZ dollar(10億ドル)はかかると伝えています。

しかし、この10億ドルは復元費用であって、水害対策を講じた計画とその費用は含まれていない

気候変動が叫ばれるなか、今回と同規模のサイクロン再来を念頭においた復興計画でなければ被災者は納得しない。となると、10億ドルはスタートポイントで復興計画の中身にどれほどのお金を政府が用意するかに注目がいきます。

ヒプキンス首相としては、復興計画を早急に打ち出し、予算を捻出しなければいけませんが、投入額が大きければ大きいほど、インフレ率を抑えるために中央銀行が政策金利を上げている現状に相反することになり、景気後退に進む確率が上がるためむずかしい状況。

ヒプキンス首相は10月の総選挙までの限られた期間に成果をださないと支持率低下は避けられず、政権交代の憂いに合う可能性が高い。

まさに試練。厳しすぎる。

が、ピンチはチャンスとも言う。

今回の局面にうまく対応して国民を納得させることができれば、確実に支持率はあがるよね。

検討をお祈りします。

ものかん
ものかん

本稿執筆中に、ニュージーランド準備銀行が金利を0.50%引き上げて政策金利を4.75%にするという発表がありました。大手銀行のアナリストなんかが、サイクロンの被害の大きさを鑑みて今回の利上げは避けるべきとかいう論調の記事もありましたが、オア総裁は「金融政策への影響を正確に評価するには時期尚早」と言ってました。災害前にでていた大方の予想0.75%ではなく、0.50%の利上げですから、今回は時期尚早だけど、当然この先、良くない数字が出てくることを見越しての0.75%の利上げにはしなかったという感じですかね。

それでも、インフレ目標内にインフレ率を収めるという方針が変わらない以上、今後も利上げを止める理由はないですから、繰り返しになりますが、ヒプキンス首相にとっては本当に難しい舵取りになりますね。

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