ニュージーランドといえば羊
道路には羊が群れ、牧羊犬が追い立てるくらい
人の何十倍もの羊が住んでいる国。
広大な草原と美しい景観と羊。
スーパーマーケットではラム肉が幅を利かせているようには見えないけど、
羊の標識があるくらいヒツジだらけ。
お土産だってラノリンクリームとかウール関連製品だとかひつじヒツジ羊。
そんなヒツジ推しな国、ニュージーランドですが、StatsNZが2023年5月22日に発表したAgricultural production statisticsによると、1850年代は羊と人の割合が22:1と、羊が人の22倍という数で圧倒していたものの、2022年には5:1にまで縮小されてニュージーランドでの飼育頭数は2,533万頭になっているとのこと。
2021年には2,573万頭いた羊がたった一年で全体の2%にあたる40万頭減少していることがわかりますが、これは特別なことではなく、年々それくらいのペースで羊の飼育頭数が減っているのです。
隣にぶっちぎりのヒツジ大国が爆生していた
ニュージーランドの隣と言えば、カンガルーやコアラ、グレートバリアリーフやウルル、オージービーフやワインなど誰でも知っているようなアイコニックな動物や観光名所、農畜産品に事欠くことのない国、オーストラリアですね。
そのオーストラリアでは、現在7800万頭以上の羊が飼育されていて、「羊の国」ニュージーランドの2500万頭を3倍上回る飼育頭数で堂々の世界第1位の羊生産国なんです。
は? 圧倒的にぶち抜かれてるじゃないですか!
そう。 ちょっと負けているとかではなく、全く太刀打ちできないほど負けているんですね。
補足しておくと、飼育頭数統計が出ている国の中ではオーストラリアが羊の飼育頭数世界1位。3倍もの開きがあるニュージーランドはそれでも2位です。また、これに統計がない国の推測値を加えると1位は中国となり、2位、3位にオーストラリアとニュージーランドが続きます。
羊肉を食べれば「羊の国」の称号奪還に貢献できる?
そうお考えになられた方々からはニュージーランド愛を感じますが、ニュージーランドの肉牛と羊の生産者団体Beef + Lamb New Zealandによると、国内で生産される羊肉の94%は海外に輸出しているそうです。
輸出にほぼ全振りやないかーい!
まあそうなんですけど、国内流通している6%を計算するとニュージーランドの国民1人あたり年間7kg相当の量なんです。
2,533万頭の6%=150万頭
1頭からとれる肉を25kgと仮定=年間国内流通量 3.75万トン
ニュージーランド人口550万人=1人あたり年間7kg相当
実際には、赤ちゃんやベジタリアン、健康上の理由等で食べられない人などが一定数いるし、「羊の国」に来たらラム肉を食べて帰るという観光者も多いでしょうから、1人あたり年間7kg相当というのは、あくまでも量をイメージするための数字だと捉えてください。
羊肉は輸出に全集中
ともあれ前述のとおり、全体の6%相当の羊肉を国内に供給し、94%はすべて輸出するという集中技でニュージーランドは長い間、羊肉輸出量世界一位の座を保持していました。
しかし、オーストラリアが生産量を増やすことでコストを削減して競争力を高める Economies of scale (規模の経済)を持って世界にアピールし続けていることで、ニュージーランドは輸出量でも世界1位の座を明け渡し、その差も確実に広がってきているようです。
上記のグラフはオーストラリア生産者団体が2018年に公表した「ニュージーランドの羊肉産業スナップショット」の中から抜粋しています。このグラグをみると2014年から2017年にかけて2カ国の輸出量は拮抗していたことが伺われますが、オーストラリア貿易投資促進庁によると2021年の羊肉輸出市場の世界シェアはオーストラリアが37%で1位。次いでニュージーランドの33%となっています。
明暗がはっきりと分かれた見通し
ニュージーランドとオーストラリアの生産者団体がそれぞれに公表している2023年度中期レポートを読むと、そのトーンの違いに明暗がハッキリと現れていましたので、類似事柄についてコメントされている部分を抜粋しておきます。
- 豪州: 2023年の羊肉生産量と輸出量は過去最高となる見通し
NZ: 2023年のラム肉輸出総額は過去最高だった2021-22年に比べて12%減となる見通し - 豪州: 全州で飼育頭数の増加を予想
NZ: 2022年春の羊肉収穫量は、2021年よりも8.5%低い2,020万頭と推定 - 豪州: ニュージーランドの飼育減少で世界最大の羊肉輸出国として市場シェアのさらなる拡大好機
NZ: ニュージーランド産ラム肉の主要市場の需要は、いずれも緩やかに低迷 - ニュージーランドの飼育頭数が減少し続け、羊毛や羊肉の収益性が酪農に比べて低下し、牧羊地が減少すると、オーストラリアの生産者や輸出業者には新たな機会が生まれる可能性有。
- 豪州: ニュージーランドの羊肉輸出は、ヨーロッパから中国へとますますシフトしているため、オーストラリアの羊肉にとって、ヨーロッパ市場での機会向上は続く可能性
NZ: 中国、米国、EU圏からの輸入需要は、ニュージーランド産ラム肉の回復の主要な原動力となる。
オーストラリア:Sheep projections
ニュージーランド:Mid-Season Update 2022-23
2021年の時点で輸出量に4%の差がついていて、生産量は現時点で3倍の開きがある状況で、業界の勢いを感じるオーストラリアのレポートを読むと、今後さらに突き放されそうな状況に思えてしまいます。もう「羊の国」の称号はオーストラリアのものなんですかね。
Blah blah blah…. ニュージーランドが「羊の国」ってことでOKね? ( ・ิω・ิ)
いやいや、我ら「羊の国」ニュージーランドは飼育頭数が減少しているとはいえ、今でも1人あたり羊5頭なのに対してオーストラリアは1人あたり羊3頭ですからね。(震え声)
頭数で負けたとか、輸出額も負けてるとか、わかってないなぁ。
ニュージーランドの中の人や、観光でくる人にしたら、そんなの全く関係ないですよ。
「羊の国」というからには、
勝負はすぐ近くに羊がいるかどうかですよ。ね?
つまり勝負どころは羊の密集度ってことですね。
国土はオーストラリア7,692,024km2 に対してニュージーランドは268,021 km2なので、オーストラリアは1キロ平方メートルにたった10頭しかいないのに対してニュージーランドは1キロ平方メートルに94頭もいるということで密集度高いんです。
ニュージーランド圧勝じゃないですか。オーストラリアの9倍ですよ。9倍。
ね~すごいでしょ。「羊の国」はやっぱりニュージーランドなんですよ。
あ、そうだ。シドニーの公園って羊います?
オークランドのCornwall Parkには、ほぼいつも、すぐそこに羊いますよ。写真撮りまくりですよ。
みなさん、どうですか?
ニュージーランドはいまも羊の国でしょうか?
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