比較 在ニュージーランド 日本人と他国籍者 Part 2 生産年齢人口と複数の言語を話す割合編

生活

在ニュージーランド日本人の収入について掘り下た記事「クローズアップ 収入 ニュージーランドで暮らす日本人のお金事情 -国勢調査を紐解く-」のスピンオフ記事「比較 在ニュージーランド日本人と他国籍者 Part 1 国籍別 在住者と年齢編」に続くPart 2 生産年齢人口と複数の言語を話す割合編です。

Part 1 国籍別 在住者と年齢編はこちら。

在ニュージーランド日本人との比較対象6ヵ国籍

今回も「比較 在ニュージーランド日本人と他国籍者 Part 1 国籍別 在住者と年齢編」で比較対象とした6カ国籍を在ニュージーランド日本人と比較していきます。

比較対象国籍者

‐ 欧州系ニュージーランド人
‐ 中国人
‐ 韓国人
‐ ドイツ人
‐ ロシア人
‐ アメリカ人

では、さっそくPart2のタイトルでもある生産年齢人口の比較から見ていきましょう。

生産年齢人口(働ける年齢15-64歳の人口)を比較

Part 1 「国籍別 在住者と年齢編」 でニュージーランドに住んでいる日本人は0-14歳の年少人口割合が高い事と、欧州系NZ人が超高齢者社会に突入している事が分かりましたが、それを反映して日本人と欧州系NZ人は共に、15-64歳の人口生産年齢人口の割合が低く、また年少人口割合が最も低かった韓国人の生産年齢人口割合は最も多い結果になっています。

在NZ日本人欧州系
NZ人
中国人韓国人ドイツ人ロシア人アメリカ人
在住者数18,1443,013,437247,77035,66416,8187,71316,245
生産年齢人口(15-64歳)12,450
(69%)
1,845,580
(61%)
175,598
(70%)
27,417
(79%)
12,281
(73%)
5,645
(73%)
11,615
(71%)
NZ国内生まれ1,676
(12%)
1,652,274
(89%)
16,076
(9%)
1,363
(5%)
2,363
(19%)
238
(4%)
644
(6%)
NZ国外生まれ10,971
(88%)
195,168
(11%)
156,191
(91%)
26,010
(95%)
9,908
(81%)
5,405
(96%)
10,974
(94%)
ソース:2018年 ニュージーランド国勢調査

ニュージーランドに根付いているのはどの国籍者?

生産年齢人口の枠に納まる人の出生を、ニュージーランド国内・国外で分けると、ドイツ人のニュージーランド生まれ率が19%と、群を抜いて他国籍よりも高い数値であることに目が向きます。

「さすが、どこに行っても必ずと言えるほど見かけるドイツ人。根付いてるね」とは、ものかん個人の第一印象。

そして61歳以上のドイツ人人口を見ると、日本人936人に対して倍の1,909人いました。

それだけニュージーランドを気に入って定住し、2世、はやければ3世とニュージーランド生まれの世代が続いているという事なのかな。

ものかん
ものかん

そんなふうに考えながら、Part1でご紹介したドイツ人コミュニティの一つ、ゲーテ ソサエティのサイトを斜め読みしていたら、そこには「1930年代に中央ヨーロッパ諸国からドイツ語を話すユダヤ人がナチスの影響から逃れるために難民としてニュージーランドへ移住してきた」と記されていました。

ドイツ語話者の移民の始まりは、軽々しく「根付いてるね」と言えるような明るい事情ではなかったようです。

そしてドイツ人の割合から7%も落ちますが、生産年齢人口に達しているニュージーランド生まれの日本人の割合は12%とドイツに次いで高いようです。

1985年に日本‐NZ間でワーホリ制度が始まり、気軽に「おためし長期滞在」が可能になったことが日本人の移民人口の増加に一定の割合で寄与していると考えてよいと思います。

1985年当時18-30歳だったワーホリ1期生は、2023年の今、56 ‐ 68歳になっています。
1985年以降10年間で家族を持ちニュージーランドで子供が生まれたとするなら、2世である子の年齢は今28-38歳くらい。さらにその子らの子供がまたニュージーランドで生まれてるなら3世の年齢はおよそ0-20歳で、15歳以上の子はニュージーランド生まれの日本人として生産年齢人口としてカウントされています。

もちろんワーホリ経験からの定住でなくても、現在33歳より上であろう年齢の日本人が定住してニュージーランドで出産していれば、その子らもまた現在15歳を超えていると可能性がある。そういった積み重ねがニュージーランド生まれの日本人生産年齢人口(15-64歳)割合を12%にまで引き上げたと考えられます。

ものかん
ものかん

移民者の母国からみた視点では「NZ生まれ=外国で生まれた我が国民」となり、これを欧州系NZ人に当てはめると、欧州系NZ人の11%が外国で生まれた我が国民という事になります。今回の比較対象でNZ生まれの割合が10%を超えていたのはドイツ人と日本人だけですから、見方によっては、外国で生まれ、現在はニュージーランドに住んでいる欧州系NZ人の11%というのもまた高い割合だと言えるかも知れません。

逆にニュージーランドに根付いていない国籍者は?

ドイツ人や日本人とは逆に生産年齢人口(15-64歳)にニュージーランド生まれの割合が少ないのが韓国人、ロシア人そしてアメリカ人です。

韓国人に注目してみると、生産年齢人口(15-64歳)の割合が、今回の比較ではどの国籍よりも高い79%。人数でみれば約2.7万人と日本人約1.2万人の倍にあたる韓国人がいるものの、その95%はニュージーランド国外生まれの移民で、ニュージーランド国内生まれの人数では日本人の方がやや多いです。

ものかん個人の肌感覚では、昔から韓国人移住者は多かったように思いますし、韓国人向けの無料韓国語情報誌も日本人向けのそれよりも多くあり、いずれにも多くの広告が掲載されていたと記憶しています。にも関わらずニュージーランド国内生まれの生産年齢人口(15-64歳)の割合が低い=ニュージーランドに居着かずに去ってしまう傾向が強いと推測されます。

ものかん
ものかん

思い起こせば、韓国は1997年にジョージ ソロスが引き起こしたアジア通貨危機で国際通貨基金(IMF)の支援を必要とするほどの深刻な経済危機に陥りましたが、その後、内需主導型の経済構造に移行して安定性を高めつつグローバル化を推し進める事に成功しており、今は世界経済10位前後で推移しています。

母国の経済が成長し、グローバル化が推進されているのなら、マイノリティーとしてニュージーランドで生活するよりも、マジョリティーであり帰国子女としての活躍も期待できる母国に戻ったほうが得策と考える人が多いとしても何ら不思議ではありません。

ソース:世界経済のネタ帳


また、韓国よりもさらにニュージーランド国内生まれの割合が低かったのがロシア人ですが、正直なんだかよく分かりませんでした。

2018年の国勢調査によるロシア人在住者数は7,713人と今回の比較対象の中では最も少なく、移民の歴史そのものが浅いのかと思いきや、「ロシア革命後(=1917年後)に共産主義体制から逃れるための政治的亡命の意味合いが強い移住がいた」というような記述や、1800年代からロシア移民がいたという記述があったり、ロシア移民の始まり時期を指すようなイベントは見つかりませんでした。また在住者数についても、New Zealand Ministry of Foreign Affairs and Trade (MFAT:ニュージーランド外務貿易省)のサイトにはニュージーランドのロシア人人口はおよそ15,000人だと記されていたりと、情報がゴチャっとしています。

ものかん
ものかん

情報がまとまらないうえに本編の比較とも全く関係ありませんが、ウェリントンにあるロシア人コミュニティ「Wellington Russian Club」のサイトに興味深いイベントが記されていたのでご紹介します。

そのイベントとは、ソ連がナチスを打ち破った戦勝記念を祝うイベント”Anniversary of the Victory in the Great Patriotic War of 1941-1945”。

グレートパトリオティック戦争とは初耳でしたが、第二次世界大戦中の 1941-1945にあったソ連とナチスの戦いを、ロシアおよび旧ソ連諸国ではそう呼ぶそうです。この戦勝記念を祝うイベントの何が興味深いのかというと、サイトに掲載されていたこちらの写真。

https://wellingtonrussianclub.org.nz/en/victory-day-concert-7-may-2023/

ちょっ これウェリントン? コスプレ?ガチなの?あれ?岡田眞澄 スターリンの肖像画ぁぁ!?
ロシア系移民の始まりは「共産主義体制から逃れるための政治的亡命の意味合いが強い」って記事あったけど、 スターリンの肖像画を飾ってるなら、この人たちは亡命者を追いかけてきた人たちの末裔なの?といろいろ混乱しました。

が、そもそも、このthe Great Patriotic Warはナチスのソ連侵略で始まり、それを押し返して勝利し、第二次世界大戦の終結に大きく貢献したのはスターリン。ナチスの進行で親族をなくした方も沢山いるので、スターリンは独裁者である以上に英雄なのかも。

それにしてもニュージーランドで撮られたとは思えない、いろんな意味ですごい写真だと思います。

複数の言語を話す割合を比較

ニュージーランドに住んでいる人々はいくつの言語を操っているのか?

「母国語+英語」が話せると回答する人が多くても驚きはないものの、一方で、日本から移り住んできた移住者には、その大多数が強烈に感じるであろう「英語のハンデ」があり、実際に10年以上住んでいる人でも「英語の問題はない」と自信を持って答えられる人は割と少ないのではないか?加えて日本人は自己を過小評価する「控えめ」な印象もあるので、どんな結果になっているのか楽しみです。

また中国人であれば、例えば「英語はダメだが、マンダリンとカントンニーズの2言語話せる」という人も一定数いてもおかしくないような気がしますし、ゲルマン系のドイツ語話者も然り。

さて、結果はどうだったでしょうか。

2カ国語以上話せると回答した日本人の割合

2カ国語以上話せると回答した日本人の割合はなんと、韓国人を上回っていました!

そして、中国人をも上回わっています!言語能力に関しては己を過小評価なんてしていない模様。

在NZ日本人欧州系
NZ人
中国人韓国人ドイツ人ロシア人アメリカ人
生産年齢人口 話せる言語の数:021
(0%)
1,847
(0%)
172
(0%)
27
(0%)
4
(0%)
4
(0%)
0
(0%)
生産年齢人口 話せる言語の数:13,731
(30%)
1,713,950
(93%)
68,916
(40%)
10.985
(40%)
2,651
(22%)
1,159
(21%)
9,353
(81%)
生産年齢人口 話せる言語の数:2+8,682
(70%)
129,797
(7%)
103,179
(60%)
16,361
(60%)
9,590
(78%)
4,477
(79%)
2,263
(19%)
ソース:2018年 ニュージーランド国勢調査

英語が母国語の欧州系NZ人とアメリカ人の割合

英語が公用語で、移民の国であるアメリカから来たアメリカ人はその19%が2カ国語以上話せると回答しているのに対して、同じく英語が公用語の欧州系NZ人はわずか7%という結果。

移民の国アメリカからNZへの移民者は、米語‐NZ語の違いはあれど、大枠では同じ英語圏で新たな言語の習得は不要であるにも関わらず、19%もの人が2カ国語以上話せると回答しているのは、非英語圏からアメリカに移住し市民権を取得したした人々によるニュージーランドへの再移住であることを示唆しているのかもしれません。

ものかん
ものかん

最後にもう一つ、「日本語を話す」人について。

2018年の国勢調査結果によれば、「日本語を話す」と回答した人の数は24,885人で、ニュージーランドに住む日本人の数は18,144人でした。「日本語を話す」人が日本人数よりも約7,000人多いことが分かります。

当然、日本人でなくとも学校で日本語を学んだり、日本人と結婚したり、日本在住経験や留学経験があるなど、さまざまな理由で日本語を習得している人がいます。逆に、国籍が日本であっても、日本国外で生まれ育つ等、日本語で意思疎通ができない人もいます。

したがって、日本人であっても必ずしも日本語を話すわけではないということは理解しておく必要があり、またここが統計の限界点だとも理解しておいてください。詳細が深部まで掘り下げられないため、具体的にニュージーランドに住む何人の日本人が日本語を話し、何人の日本人以外が第二、第三の言語として日本語を話せるのかは明確になっていません。

しかし、比較の際には、日本人数を日本語を話す人数として仮定し、残りの約7,000人は日本人以外が第二、第三の言語として日本語を話せると答えていると仮定することが一般的です。これにより比較の基準を統一しています。

次回、Part3では、労働人口をベースに比較していきます。

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