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「貯金の常識」 NZで生き残るマネー戦略

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「あなたの常識は私の常識ではない」と言われて、ハァ?となるか、ハッ!とするかは人それぞれ。

ことお金に関して、ニュージーランドに住んでしばらく経つと、日本で当たり前とされてきた「お金の常識」が通用しない場面に出くわす方が多いと思います。

なかでも象徴的なのがこちら↓

ニュージーランドの人って
ホント貯金しないよね??

ニュージーランドの人たちは浪費家なのか?それとも計画的に行動するのが苦手な人たちなのか??

この記事では、
お金を貯金しない傾向が顕著なニュージーランドに住む人々の「貯金の常識」とは、どのようなものなのか?

背景をかんたんに日本と比較したうえで、経済の視点でお伝えしていきます。

目次

デフレと貯金の国 – 日本

バブル崩壊後から2024年頃まで、40年弱ものあいだ日本はデフレゼロインフレ経済が続き、生活を簡素に述べると下記のような状況でした。

  • 物価:下がるか、上がってもごくわずか
  • 給料:ほぼ増えない。実質賃金はむしろ低下
  • 貯金:価値はほぼ目減りせず維持
ものかん

日本の消費者物価指数は1990年代後半から2024年頃まで、四半世紀近くにわたってマイナスまたはゼロ近辺を推移していた世界を見渡しても類を見ない超絶レアな国です

2025年の時点で40~50代の人はバブルの歓喜と崩壊を経験/見聞きしつつ、その後はずっと低成長・デフレ環境の最前線で生きてきた「節約」「貯金」「安定志向」が染みついている世代

2025年の時点で20~30代の人は人生で一度も物価が上がるという経験をしたことがほぼなく、「モノは安くなっていくもの」「貯金しておけばOK」という価値観で育った世代

つまり現在ニュージーランドに永住している方や、移住を考えている世代の殆どが、「お金は使わずに取っておくことが賢明」という価値観が当たり前の世代だと言い換えられます。

ではニュージーランドの同世代の人々はどんな時代を過ごしてきたのでしょうか?

インフレと支出の国 – NZ

1980年代以降、現代に至るまでずっとインフレが進行し続けているニュージーランドは日本の対極にいると表現できます。

  • 物価:毎年じわじわ上昇
  • 給料:物価上昇に合わせて定期的に上がる
    (注:実質賃金は停滞・低下することも)
  • 貯金:価値が目減りする
ソース:StatsNZ(ニュージーランド統計局)

お金は貯金していると金額は減らなくても年々価値が目減りするため、逆に積極的な支出で資産形成につなげるケースが多いのです。

誤解しがちですが、ニュージーランドが「特別にインフレが激しい国」なのではなく、世界の多くの国ではインフレが「普通」ということ。
異常なのは長年インフレがなかった日本の方で、2023年からようやく「普通」に近づいてきたという状況です。

NZ‐4年間$100札を放置すると?

インフレにより年々、物やサービスの値段が上がるニュージーランドとはいえ、$100札は何年たっても$100札ですから放置しても$100札に変化はありません。
しかし金額は変わらなくても、「$100で買える物やその量が年々減る=毎年価値が目減りしている」事を、実際の2021-2024年平均インフレ率を基にした例を用意したのでご覧ください。

ニュージーランドは2021-2024年の間で約21.3%価格上昇している。これは2021年に$100を無利子で貯金した場合、4年間で実質的な価値は$17.53減っている事に相当します。

ニュージーランドは2021-2024年の間に物価が約21.3%上昇しました。
仮に2020年にコーヒーが1杯$5、$100で20杯購入できたとすると、年々物価があがり2024年には同じ$100で16杯しか購入できなくなっています。

これがお金の価値が減少したという事です。

貯金していた場合

物価が約21.3%上昇=お金の価値が減少したという点で、もし貯金しているお金があったのなら、その価値がどうなったのかも見てみましょう。

ケース:一般口座

銀行の利息がつかない一般口座に2021年1月から1万ドルを預けいれて放置してたなら、4年間で実質的な価値は$1,756減って$8,244 相当になっている事になります。

貯金していたつもりが置いておくだけで$1,756の損失。より正確に表現するなら「$1,756の実質的な購買力の損失」です。

式:$10,000 ÷ 1.213 =$8,244

注)繰り返しますが、預け入れた1万ドルという額面が減るわけではないので、何年経っても銀行手数料等がない限り1万ドルのまま引き出せます。ここでお伝えしているのはその1万ドルの購買力が減っているという話です。

定期預金の場合

利息がつかない口座でみるのは不公平じゃない?という声が聞こえてきそうなので定期預金でも計算してみました。

条件設定は下記のとおり

  • 元金:1万ドル
  • 期間:6ヶ月定期を2021年1月から4年間
  • 満期時:利息を元金に加えて全額6ヶ月定期に再投資
  • 適用金利:該当時期にニュージーランドの全登録銀行が提供していた定期預金金利の加重平均を適用

この条件で試算すると、4年間で1万ドルに対して金利は合計で$1,507.54つき、最終的に$11,507.54を受け取る結果となりました。定期預金ですから、額面だけを見ると確かにお金は増えています。

しかしここで重要なのはお金の価値(購買力)。

4年間のインフレによって、もともと1万ドルで買えたものと同じ量の商品・サービスを買うには、$11,507.54あっても足りない状況になっています。

4年定期に入れて増やした$11,507.54の価値は、4年前の価値に換算して$9,486.84程しかないのです。

つまり、
4年前に1万ドル預けて6ヶ月毎に定期預金を更新し続けにもかかわらず、実質では$513.16の損失を出してしまったことになります。

定期預金金利の加重平均ソース元: Reserve Bank of New Zealand New interest-bearing term deposit interest rates (B26)

式:$11,507.54 ÷ 1.213 =9,486.84

どちらのケースもお金を置いておくだけで損している

金利ゼロで銀行に1万ドルの現金を置いておいた場合は$1,756の実質的な購買力の損失。
6ヶ月定期を4年続けた場合は$513.16の実質的な購買力の損失。

どちらにしても、お金を使わずに取っておく事は損失でしかないという結果になりました。

ものかん

もちろん金利がインフレ率を上回れば利益を得ることができますし、金利とインフレ率が同等なら、実質的には損も利益もない状態になり得るので常に損をするものだとは言い切れません。しかし、金利がインフレ率を上回る状況は非常にレアです。通常、金利はインフレを追いかけて変動するため、まさかの追い越して誰もが利益を生む状況を作ってしまうなんてことは少ないのが実情です。

ニュージーランドの貯金にはメリットがないのか?

ここまで読んで、なぜニュージーランドに住む人々は貯金しないのか?が少しでも分かっていただけたかと思います。
置いておくだけでお金(の価値)が年々減っていくのがニュージーランドなのだという事です。

しかし貯金を全否定するのも難しいのは言わずもがな。
たしかに、これまでに述べてきたとおりインフレに負けるリスクが高いものの、事故、病気、失業などの「いざという時」に現金が手元にあるメリットや、投資や大きな買い物への準備など理由は様々あれど大なり小なり貯金するのは誰でも同じ。
日本をはじめ海外から移り住んできている移住者なら母国への一時帰国を楽しむためだけでなく、緊急帰国に備えた航空券資金を貯めるなども必要と感じる方もいるでしょうし、「全部を預金に放置するのはもったいないけど、ある程度の現金を持っておくのは必要」だと思います。

その持っておくべきだけど持っているだけで価値が減っていく現金をどう持っておくのか?
これを機会に考えてみてはいかがでしょうか。

ものかん

最後にひとつ重要な認識として、これらの現象や考え方は、「国」ではなく、国の「経済環境」に起因している事だと理解してください。
ニュージーランドは1980年代の経済改革以降、持続的な成長とインフレ環境が続いており、キウイのマインドセットと実体経済が、貯金にメリットを見出しにくい状況を生み出しているだけです。
仮に日本のような長期デフレやゼロインフレがニュージーランドに起きれば、この状況は大きく変わり「お金は使わずに取っておくことが賢明」という価値観にシフトする可能性は大いにあります。

用語

デフレ -Deflation-

景気が悪く買い控えが起きて経済が縮み物価が下がる。
物価が下がる → お金の価値が上がる → 貯金してるだけで得する。

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ゼロインフレ -Zero-inflation –

物価が横ばい。安定しているとも言えるが成長がない。
物価が横ばい → お金の価値もほぼ変わらない→貯金しても損はしないが得もしない。

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消費者物価指数 – Consumer Price Index –

人々が日常的に買うモノやサービスの平均的な価格の動きを示す指標。
この指数が;
‐上がる=物価が上がる=インフレ
‐下がる=物価が下がる=デフレ
‐横ばい=物価が動かない=ゼロインフレ

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インフレ – Inflation

景気がよく需要が増えて経済が拡大し、物価が上がる。
物価が上がる → お金の価値が下がる → 貯金してるだけで損をする。

→元の位置に戻る

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この記事を書いた人

ニュージーランド在住のビジネスサポーター
「ニュージーランドのお金」執筆・運営
堅実なデータをもとに経済・ビジネス情報を発信

NZ・豪・東南アジア・UAE・日本で市場調査や戦略設計を手がけ、スタートアップや成長企業の支援に携わってきました。

Xでは日本&NZの時事ネタやビジネスの裏話をゆるっと発信中。
情報は少し硬めですが、性格は柔らかめ。
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