NZ人は働かない? 日本人は働きすぎ? 労働生産性から見える両国の意外な共通点

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この記事は、公的な労働統計を紹介しながら、筆者ものかんが日本とニュージーランドで見聞きしてきた働き方について、個人的な経験と仮説を交えて考察するものです。統計で確認できる事実と、筆者の主観的な見解は区別してお読みください。

「日本人は働きすぎ」「ニュージーランド人はワークライフバランスを大切にする」

そんな話を聞いたことがある人は多いでしょう。

私自身、ニュージーランドで長年暮らし、さまざまな職場やビジネスの現場を見てきましたが、両国の働き方には確かに大きな違いを感じます。

日本では、長時間労働や過剰なサービスが問題になることがあります。

一方、NZでは、定時になれば帰宅し、自分の担当外の仕事には積極的に関わらない人も珍しくありません。

もちろん、どちらの国にも勤勉な人とそうでない人がいますし、定時に帰ること自体が悪いわけではありません。

しかし、私の目には、日本では多くの人が必要以上に働いている一方、NZでは十分な仕事をしていない人が少なくないように映ります。

ところが、両国の労働生産性を比較すると、意外な事実が見えてきます。

日本とNZは、働き方がこれほど違って見えるにもかかわらず、就業者1人当たりの労働生産性がほとんど同じなのです。

なぜ、そんなことが起こるのでしょうか。

今回は、OECDなどの公的統計を確認しながら、両国の働き方とサービス文化について、私なりの仮説を考えてみたいと思います。

目次

実はNZの方が日本より働いている? OECD統計から見える意外な数字

まず、少し意外なデータから紹介しましょう。

OECD(経済協力開発機構)が公表している、加盟国の年間実労働時間の統計です。

この統計では、対象年によってはニュージーランドの年間実労働時間が日本よりも長くなっています。

https://www.oecd.org/en/data/indicators/hours-worked.html

ニュージーランドで長く生活している日本人の中には、「本当かよ!」と思わずツッコミを入れたくなる人もいるのではないでしょうか。

ただし、この数字には注意が必要です。

OECDの年間実労働時間には、フルタイム労働者だけでなく、パートタイム労働者や自営業者なども含まれます。

また、国によって統計の作成方法が異なるため、OECD自身が、この指標を使って各国の特定年の年間労働時間の水準を単純に比較することは適切ではないと注意しています。

そして、ここにはもっと重要な点があります。

労働時間として計上されていることと、その時間にどれだけ実質的な仕事をしているかは、別の話なのです。

例えば、8時間勤務していても、実際に集中して仕事をしている時間が短ければ、勤務時間と実質的な労働投入には差が生じます。

もちろん、集中していないように見える時間が、すべて無駄というわけではありません。考える時間や、仕事に必要な待機時間もあるでしょう。

それでも、勤務時間という数字だけでは、どれだけ責任を持って仕事を遂行し、どれだけの成果を生み出しているかまでは分かりません。

私の周囲では、日本よりも早朝から働き始める人を多く見かけます。NZで働く皆さんの周りにも、そうした人は多いのではないでしょうか。

しかし、始業時間が早いからといって、年間の労働時間が長くなるとは限りません。

私がここで問題にしたいのは、仕事を始める時刻や帰る時刻ではなく、その間に実際にどれだけ仕事をしているかということです。

NZの労働生産性は本当に低いのか

実際、ニュージーランドの労働生産性の低さは、私個人の印象だけの話ではありません。

OECDの2026年のニュージーランド経済調査では、NZの労働生産性の成長が過去20年間で鈍化し、OECD平均や他の先進小国を下回っていると指摘されています。

また、NZ政府のビジネス・イノベーション・雇用省(MBIE)と外務貿易省(MFAT)も、2025年12月に公表した報告書「New Zealand’s productivity in a changing world」で、NZの生産性向上を重要課題として取り上げています。

そこで挙げられているのは、設備投資の不足、国内市場の小ささ、企業の規模、研究開発や技術革新の普及など、さまざまな構造的な問題です。

もちろん、こうした問題が生産性に影響していることは理解できます。

しかし、私がこれまで見てきた職場の実態からすると、もう一つ無視できない要因があるのではないかと感じています。

それは、そもそも十分に働いていない人が相当数いるのではないか、ということです。

勤務時間が8時間だからといって、その8時間を通じて十分な仕事をしているとは限りません。

指示された最低限の仕事だけをこなし、それ以上は動かない。担当外の仕事には関わらず、改善や効率化にも関心を示さない。

そんな人たちが多い職場では、設備投資や技術革新以前に、そもそも人材の持つ能力が十分に活用されていないのではないでしょうか。

もちろん、この考えを裏付ける全国的な調査結果を私は持っていませんし、調べてもでてこないと思います。

ただ、私が見てきたNZの職場の実態からすると、労働者の実質的な仕事量や、仕事に対する当事者意識も、生産性を考えるうえで無視できない要素なのではないかと思うのです。

ところが、日本の労働生産性もNZとほぼ同じ

ここで、さらに興味深い数字があります。

公益財団法人日本生産性本部がOECDのデータを基に公表した2024年の就業者1人当たり労働生産性を見ると、次のようになっています。

国就業者1人当たり労働生産性
ニュージーランドUS$100,533
日本US$98,344
2024年、購買力平価(PPP)換算
ソース:日本生産性本部「労働生産性の国際比較2025」

なんと、日本とNZの労働生産性は、ほとんど同じで、むしろ日本のほうがやや低いのです。

日本の時間当たり労働生産性も、2024年にはOECD加盟38カ国中28位でした。

「日本人は勤勉だが非効率」と言われることがありますが、実際に日本もNZ同様に、OECD加盟国の中では労働生産性が低い国の一つなのです。

さらに、両国の人口を比較すると、日本は約1億2,380万人、NZは約529万人。

日本の人口は、NZの実に約23倍です。

もちろん、労働生産性とは就業者1人当たりの付加価値ですから、人口が23倍あれば生産性も23倍になるというものではありません。

しかし、人口規模の違いは、企業の競争環境や国内市場の大きさ、専門分業のしやすさなどに影響します。

NZ政府自身も、「小さな国内市場や海外市場からの距離を、生産性向上を難しくする構造的な要因」として分析しています。

これほど異なる条件を持つ両国で、就業者1人当たりの生産性がほぼ同じというのは、なかなか興味深い話ではないでしょうか。

ただし、ここで比較しているのは、あくまで就業者1人当たりの指標です。

時間当たりの生産性とは異なりますし、産業構造や設備投資などの条件も異なるため、この数字だけで日本人とNZ人の仕事の効率を直接比較することはできません。

それを踏まえたうえで、私には一つ考えていることがあります。

NZは働かない。日本は働きすぎても十分な対価を生み出せない?

ここからは、完全に私自身の仮説です。

私が日本とニュージーランドの働き方を見比べて感じるのは、両国では労働生産性が低くなる理由そのものが違うのではないか、ということです。

ニュージーランドでは、勤務時間として計上されている時間のうち、実際には十分な仕事をしていない時間が相当あるのではないか。

一方、日本では、むしろ勤務時間を超えてまで一生懸命働いているのに、その労力が必ずしも十分な金銭的付加価値につながっていないのではないか。

例えば、日本の小売店や飲食店では、丁寧な接客、商品の包装、徹底した清掃、迅速な対応など、非常に高いサービス水準が当たり前のように求められています。

もちろん、ニュージーランドにも高品質なサービスを求める顧客はいます。

しかし、私が両国を見てきて感じるのは、そもそも顧客が「これくらいは当然」と考えるサービスの基準値が、まるで違うということです。

NZでは十分に許容される対応でも、日本では顧客から不満を持たれかねない。

そのため、日本の企業や従業員は、顧客が当然のように期待するサービス水準を維持するために、多くの労力を投入せざるを得ません。

しかも、その追加的な労力に見合う料金を、必ずしも受け取れているわけではありません。

ここで重要なのは、こうしたサービスが無駄だという話ではないことです。

日本の顧客がその品質を当然のものとして期待している以上、サービス水準を下げれば顧客離れを招く可能性があります。

つまり、企業としては必要な仕事なのです。

しかし、顧客にとって必要なサービスであることと、そのサービスに投入した労働力に見合うだけの対価を回収できることは、別問題です。

実際、日本の厚生労働省が公開している「サービス産業の高付加価値化」に関する資料(P22)でも、日本の過剰ともいわれるサービスに対して、消費者が適切な付加価値を支払う商慣行の必要性が指摘されています。

また、中小企業庁の「2020年版 中小企業白書」でも、製品やサービスに優位性を持ちながら、その価値を価格に十分反映できていない企業があることが指摘され、適正な価格設定の重要性が取り上げられています。

つまり、日本では従業員が懸命に働き、顧客に高い満足度を提供していても、そのために投入した労働力に見合う金銭的な付加価値を十分に回収できていない場合があるということです。

一方、私が見てきたニュージーランドでは、そもそも社会全体で当たり前とされているサービスの水準が、日本とは桁違いに低いと感じます。

日本人の目からすれば、サービスというものを知らないのではないかと思うような対応も珍しくありません。

しかし、それは必ずしも従業員が手を抜いているからではなく、企業側も顧客側も、日本で当たり前とされるようなサービスを、そもそも提供すべきものとして認識していないのだと思います。

つまり、日本では当然のように求められるサービスの多くが、NZでは最初から求められておらず、企業側も提供しようとは考えない。

その分、日本の企業が当然のように投入している労力自体が、NZでは必要とされていないわけです。

そして、これは必ずしも悪いことではありません。

サービスの基準が低いこと自体は、労働生産性を低下させるとは限らないからです。

少ない労働投入でも顧客が満足し、必要な売上や付加価値を生み出せるのであれば、むしろ労働生産性は高くなる可能性があります。

日本の企業が多くの労力を費やして提供しているサービスでも、NZの顧客がそもそも必要としていないのであれば、その仕事をしないことは必ずしも非効率ではないのです。

しかし、私が問題だと感じているのは、その先です。

日本と比べてはるかに低いNZのサービス基準ですら、十分に満たそうとしない人が少なくないのです。

求められるサービス水準が低いことと、その水準さえ満たさずに仕事をしていることは、全く別の話です。

前者は、必要以上の労力を投入しない合理的な働き方とも考えられます。一方、後者は、本来果たすべき仕事を十分に遂行していないという問題です。

そして、そうした勤務姿勢が広く存在するのであれば、労働生産性を押し下げる一因になっている可能性もあります。

もちろん、これがNZ全体でどの程度起きているのか、統計的に確認できているわけではありません。

しかし、私がニュージーランドの職場やサービスの現場を見てきた限りでは、単に日本とサービスの基準が違うというだけでは説明できない、仕事への取り組み方そのものの問題もあるように感じるのです。

仮にこの観察が正しいとしたら、両国は全く異なる問題を抱えていることになります。

NZでは、本来求められる仕事に対する実質的な労働投入が不足している。
一方、日本では、多くの労力を投入していても、それを十分な経済的価値に変換できていない。

そして、その結果として、両国の労働生産性が似たような水準になっているのだとしたら、非常に興味深い話です。

もちろん、現実には設備投資や産業構造、企業経営、価格設定など、さまざまな要因が絡み合っています。

この仮説だけで、日本とNZの労働生産性の低さを説明できるとは思いませんし、実際にどの程度の影響があるのかも分かりません。

ただ、働いている時間と、実際に仕事をしている量。そして、その仕事から生まれる経済的な価値。これらは必ずしも比例しないということは、両国の働き方を考えるうえで重要な視点だと思います。

まとめ:長く働くことと、価値を生み出すことは違う

日本とニュージーランド。

両国の働き方を見比べると、まるで正反対の問題を抱えているように見えます。

日本では、顧客が当然と考える高いサービス水準を維持するために、多くの労力が投入されている。

一方、NZでは、そもそもそこまでのサービスを求められていない場面が多い。

それ自体は、どちらが正しいという話ではありません。

高いサービス水準には価値があります。しかし、それを維持するための労力に見合う対価を回収できなければ、企業にとっては重い負担になります。

反対に、必要のないサービスを省くことは合理的ですが、本来求められている仕事すら十分にしないのであれば、単なる非効率です。

そして、ここに私が感じる日NZの興味深い対照があります。

日本では、働いても働いても、その労力が十分な金銭的価値にならない。
NZでは、そもそも持っている能力を十分に仕事へ投入していない人が少なくないのではないか。

もちろん、これは私自身の観察から生まれた仮説であり、統計によって証明された結論ではありません。

しかし、両国の労働生産性が似た水準にあるという事実を考えるとき、設備投資や市場規模だけでなく、こうした働き方の違いにも目を向ける価値はあると思います。

結局のところ、労働時間が長ければよいわけでも、短ければよいわけでもありません。

問われるべきなのは、限られた時間と労力から、どれだけの価値を生み出しているかということです。

日本の過剰な労働投入も、NZの緩すぎる勤務姿勢も、どちらも無条件に理想とする必要はありません。

両国で暮らし、働く私たちだからこそ、それぞれの長所と問題点を冷静に見極め、自分自身の働き方にも生かしていきたいものです。

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この記事を書いた人

ニュージーランド在住20年以上。
現地の生活、仕事、お金、ビジネスに関する情報を、実体験と一次情報をもとに発信しています。

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